昨年末は、サッカーW杯の影響で「手のひら返し」という言葉が流行りましたよね?

日本がドイツに勝つと「森保監督は名将だ!」と持ち上げ、そのわずか4日後にコスタリカに敗れると「森保はダメ監督だ!」と酷評する。短期間でのメディアやファンの態度豹変ぶりに、呆れた人も多かったのではないでしょうか?

ただし、この「手のひら返し」はサッカーに限ったことではなく、ビジネスでもよく見られる光景の1つです。

典型的なのが、上司から部下へのフィードバックです。

ある部下が良い結果を出したら、手放しで「君は最高だ!」と絶賛し、その直後に悪い結果を出したら「だから君はダメなんだ!」と全否定的ネガティブフィードバックを行う。

そんな「手のひら返しフィードバック」は避けたいものですよね?

手のひら返しフィードバックが発生する理由

ではなぜこのような「適切でないフィードバック」をしてしまうのでしょうか?例を挙げて説明してみましょう。

例えば、ある営業担当者が大型受注を勝ち取ったとします。上司としては当然嬉しい。そこで、「君は見事だな。本当に優秀な営業担当者だ!」と褒めちぎるだけに終始したとします。

ところが、ビジネスには常に運がついて回るものです。

今回の大型受注はたまたまラッキーが重なったが故の結果であり、1つ間違えば受注に失敗したかもしれないというのはよくあることです。それなのに、上司が結果だけに目を向けてしまうと、部下の営業行動を全面的に賞賛するフィードバックになってしまいます。

その直後、同じ部下がある顧客に対して大きなトラブルを起こしてしまったとします。ここでもやはり「運」の要素が存在します。

本人はその顧客に正しい働きかけを色々としていたが、たまたま不運が幾つか重なってトラブルに発展してしまったのかもしれません。ところが、上司がやはり結果しか見ていなければ、部下の全てを否定するかのような叱責フィードバックになってしまいます。

まさに「手のひら返しフィードバック」です。

手のひら返しフィードバックがもたらす悪影響

こうした「手のひら返しフィードバック」は、部下の成長という点でもモチベーションの維持という点でも大いに問題があります。

成果が出たときに無条件で全てを賞賛すると、部下は「運」を「実力」だと思い込み慢心してしまうリスクがあります。逆に、失敗したときに全否定フィードバックをすると、部下は自信喪失をしてしまうか、あるいは言い分を全く聞いてくれない上司の態度に対して、心の中で反発するかもしれません。

いずれにしても、今後の部下の成長やモチベーションを考えると、上司は正しい指導をしたとは言えないでしょう。

フィードバックで上司が意識すべきこと

では「手のひら返しフィードバック」を避けるためにはどうしたらいいのでしょうか?

具体的に意識すべきこととしては、大きく2つあります。

まず第一に「結果」と「プロセス」を切り離して考えること。

「結果」を一度棚に上げ、「プロセス」だけを見て、良かった点・改善余地のある点を洗い出します。すると、広い視野で部下の行動を客観的に見ることになり、正しい分析・フィードバックに繋がります。

もう1つは、結果と「逆」のモードでフィードバックすること。

つまり、「良い結果」のときこそあえて目を皿のようにして改善点を探し、「悪い結果」のときこそ必死に良い点を探し、指摘するのです。

部下本人は、おそらく上司以上に結果に引っ張られており、客観的に状況を見ることができていないでしょう。だからこそ、上司からの指導によって、うまく行ったときに「勝って兜の緒を締める」ことを促し、失敗した時に自信を回復させるべきなのです。

ぜひこの機会に、「手のひら返しフィードバックになっていないか?」、「結果とプロセスを切り離したフィードバックができているか?」を問うてみて下さい。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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