from 西野浩輝

当記事では主に、聞き手に伝わるプレゼン資料の作り方の基本をご紹介します。

まずはじめに、「伝わるプレゼン」とはどういうものなのかを理解しましょう。

伝わるプレゼンとは

「伝わるプレゼン」とは、以下の3条件を満たしているものです。

① メッセージがはっきりしている

全体におけるメッセージ(メインメッセージ)と、それぞれのパートにおけるメッセージ(サブメッセージ)が明確だと、聞き手にとって理解しやすいプレゼンテーションになります。

② ロジックがはっきりしている

各パート間のつながり・関係性が明確だと、聞き手にとってわかりやすく、納得性の高いプレゼンテーションになります。「原因→結果」、「方針→具体策」、「メリット⇔デメリット」等の関係性をしっかり明示ししながら話す必要があります。

③ 内容が平易で簡潔

聞き手が知らないであろう専門用語や日常あまり使わない言葉はできるだけ避け、簡単な言葉で語る方がより伝わりやすくなります。また、論理構造もシンプルに表現し、かつ情報過多にならないように内容をそぎ落とすことも、伝わるプレゼンのための重要な要素です。
これらをしっかり意識した上で資料作りを行うと、より聞き手に伝わり、腹落ちしてくれやすくなります。ひいては、こちらの意図に沿ったアクションを取ってくれる可能性が高まり、プレゼンテーションを成功に導くことができます。

プレゼン資料作成の前にするべきは、構成

伝わるプレゼン資料作成のコツは、いきなりパワーポイント資料の作成から始めないこと。やや逆説的に聞こえるかもしれませんが、このことはプレゼン指導を通じてまさに実感するポイントです。

プレゼンテーション研修における受講者の発表を聞いていて、「どうも分かりにくいな」と感じたときに、「どういうプロセスで資料を作ったか?」を聞くことがあります。大概の場合、「いきなりパワーポイント作成に入った」という答えが返ってきます。

つまり、構成を考えずにいきなり詳細の資料作成に入ってしまっているため、話のロジックや流れが分かりにくくなっているのです。

プレゼンテーションは細部も大事ですが、より重要なのは全体構成です。

「まずは構成。スライド作成はその後」

を肝に銘じましょう。

伝わるプレゼンの構成『サンドイッチ法』

では、どんな構成のやり方があるのでしょうか?

以下に効果的で応用しやすい構成フォーマットをご紹介します。

ビジネスプレゼンにおいて、圧倒的におすすめなのが「サンドイッチ法」です。

当社が20年間、100,000人を越えるビジネスパーソンに対しての指導経験を通じて効果を実感している黄金のフォーマットです。

先ほどお伝えした「伝わるプレゼンの3条件(メッセージ、ロジック、簡潔)」を自動的に満たしてくれるのはもちろんのこと、説得型プレゼンにも情報伝達型プレゼンにも、そのまま使える万能の型なので、まずはこれを習得しましょう。

サンドイッチフォーマットは、基本的に「イントロ(序論)ボディ(本論)エンディング(締め)」の3部構成から成り立っています。(下図を参照)

サンドイッチフォーマット

まずイントロでは、プレゼンの全体像を示した後、聞き手の興味・関心を引くための問題提起を行います。

「皆さんは日常で○○といった悩みをお持ちではないでしょうか? 何とか解決したいですよね?」といったふうに、聞き手の頭の中に問題を呼び起こすと聞く気にさせることができます。

次に、ボディパートです。

上図のように、「メインメッセージ」とそれを支える「3つのポイント」・「その詳細説明」で展開すると、情報が整理されるだけでなく、自然と論理が繋がっていきます。

最後のエンディングでは、重要ポイントを繰り返した上で、聞き手の行動促進のためにもうひと押しします。具体的には、導入検討のためのプロセスを示したり、この提案内容を実施することによる長期的なメリットを描くのは、エンディングパートに相応しいやり方です。

伝わるプレゼン資料のコツ(テキスト編)

構成が定まったら、スライドの作成です。その際の具体的な指針およびコツをご紹介します。

1スライド=1メッセージ

プレゼン資料を見ながら、話し手の話をしっかり聞いて理解・咀嚼するのは、聞き手にとって相当大変な作業です。

したがって、1枚のスライドに複数のメッセージを入れてしまうと論点過多になり、聞き手は内容を消化できなくなります。

「このスライドはちょっと情報、論点が多いな」と感じたら、迷わずページを2ページや3ページに分けて表現しましょう。それだけで随分聞き手の理解の負担感が減ります。

いずれにせよ、スライドはできるだけシンプルに表現するとともに、「1つのスライドには、1つのメッセージだけ」という原則を守るようにしましょう。

相手がわかる言葉で伝える

普段自分が使っている言葉は、意外と多くの人にとっては馴染みが薄く、伝わりづらいものも少なくありません。

特に注意して欲しいのが、横文字と業界用語です。

以下の例を見てみてください。

「このイシューに関するストラテジーをいきなりフィックスする前に、まずはビッグピクチャーを描き、必要なエビデンスをしっかり収集した上で、ナラティブの中で考え、最終的に全員のコンセンサスを得ていくことが重要です」

どうでしょう?はっきりいって「なんのこっちゃ???」って感じですよね?

ここまでひどい例は少ないかもしれませんが、我々は意外と無意識に聞き手になじみのない言葉を使いがちです。

聞き手は、知らない言葉が出てくると、それだけで「よくわからないプレゼンだ」と決めつけがちです。そうなると、どんな素晴らしい内容であっても聞く気を失ってしまいます。

プレゼンターとして、せっかくの努力が水の泡になるのは避けたいもの。

「自分の常識と他人の常識は違う」と考え、「ひょっとしたら知らない人がいるかも」と少しでも思う言葉は使わないと決めた方が安全です。

KISSの法則を意識する

KISSの法則」と言うのを聞いたことがあるでしょうか?

Keep it simple and short」の頭文字を取ったもので、文字通り「プレゼンの表現は、とにかく簡潔に、短く」という意味です。

このKISSの法則は、欧米ではほぼ全てのビジネスパーソンが知っているというくらい有名なものです。

そもそも、プレゼンテーションにおける、以下にご紹介する「話し手と聞き手の乖離」に関して理解する必要があります。

話し手は自分が語る内容、構成については熟知しています。自分が話すのだから当然ですよね?

ところが、聞き手はその論理構成や文脈に関してはじめて聞くことになります。

この「理解度の乖離」が、分かりにくいプレゼンを生む大きな原因の1つになります。

したがって、話し手は自分が考えるより何倍も、「simpleに、shortに」語る必要があるのです。

具体的には、以下を留意して資料をまとめることをお勧めします。

・一文を短く表現する
・キーワードを中心に図解する
・資料には最小限の情報のみ載せる

話し手は、つい「あれも話そうかな」「これも載せておこうかな」となりがちです。

「この情報を伝えるかどうかに迷ったら、捨てる」の一択で考えてちょうどいいでしょう。

図解とは、伝えたい論理・関係性を図で示したもの

プレゼン資料における「図解」を誤解している人が少なくありません。

「絵、写真やイラストをたくさん入れることが図解であり、それによって柔らかい雰囲気にして、かつ読みやすくすること」は、間違った理解です。

というのも、内容と関係のない写真やイラストが入っていると、聞き手はむしろ混乱してしまいます。

あくまで、図解の本来の役割は「ロジックを図で表現すること」であり、パッと見てある程度内容がイメージでき、理解の促進を果たすことです。

図の「Before」と「After」を見比べてください。

ただ文章で書いているだけよりも、まさにロジックを図で表現することで、直観的に何となく言いたいことが推察いただけるのではないでしょうか?

プレゼンにおける聞き手は、このように図解によって、何となく言いたいことを推測し、その上でプレゼンターの話を聞き、明確に理解・納得するのです。

この「論理を図で表現する」行為は、聞き手だけでなく、話し手にも効果があります。それは、図で表現しようとすることで、自分の言いたいロジック・論点が整理され、中身が研ぎ澄まされていくことです。

このように、図解の本質を知って実践すると、資料のみならず、プレゼンテーション全体の効果性が上がります。

そういう意味で、図解は非常に本質的な工夫なのです。

文字サイズとフォントのお勧めは?

文字サイズに関して言うと、原則は「聞き手の目にパッと入りやすい大きめのサイズで」がいいでしょう。

具体的には、最低20ポイント以上、できれば24ポイント以上がお勧めです。

小さい字でフルセンテンスを書くのではなく、キーワードを中心に大きめの字で、視覚的に分かりやすく表現するのがプレゼン資料における1つの作法です。

プレゼン本番では、それらのキーワードを元にその場でフルセンテンスにして読み上げると、伝わりやすく、かつインパクトも強くなります。

フォントに関しては、以下の3つから、自分の好みや出したい印象に合わせて2種類を選ぶのをお勧めします。

▼メイリオ
特に太字にした場合目立つため、印象に残りやすい。半面、文字間隔が詰まっているので、うるさい感じになりがち

▼游ゴシック
文字間隔が広めのため、読みやすい。半面、この文字ばかりだとやや間延び感を与える

▼HGB明朝
品のある印象を醸し出せる。半面、文字が細めのため、他のフォントよりやや印象が薄くなる

もちろん、上記以外のフォントを使っても構わないのですが、資料のデザインにまだ自信が持てない方は、まず基本となるこれら3つを使いこなしてから、他のフォントにトライするのがいいでしょう。

太字・色付き文字でメリハリを出す

聞き手は、資料に書かれている一言一句をしっかり読みながら理解するのではありません。

「大きな流れを理解しつつ、『キーワード』を繋ぎ合わせて全体を理解する」というメカニズムなのです。

したがって、プレゼン資料の文字がどれも同じ大きさや太さ、色だと『キーワード』がどれか分からず、伝わりにくくなります。

「この言葉は大事だ」と思うものを大きく、太く表現し、色も変えると俄然伝わりやすくなります。

大きさの目安は、他の「キーワードでない」言葉より、8~12ポイント大きく(20ポイント ⇒ 28ポイントあるいは32ポイント)するのが適切です。

色を付ける場合の注意点は、背景の色とよく似たトーンにしないこと。

場合によっては、文字が見えづらくなることがあります。

具体的には、背景色が白であれば、薄い赤や青を使うのでなく、やや濃いめの赤(エンジ色)や青(紺色)をつかうのが安全でしょう。

伝わるプレゼン資料のコツ(デザイン編)

メインカラーとアクセントカラーを決める

プレゼン資料における色使いは、意外と難しいもの。悩む人も多いのではないでしょうか?

色をたくさん使いすぎたり、統一感がないと、見ていて疲れるだけでなく、未熟な感じを与えてプレゼンテーション自体の価値を下げてしまいます。

色使いにおいてまずやるべきは、「メインカラー」と「アクセントカラー」を決めることです。

「メインカラー」は、文字通りプレゼン資料の主役をなす色で、多くの場合コーポレートカラーが使われます。

「アクセントカラー」はメインカラーにアクセントをつける色のことであり、メインカラーの補色が使われます。

「補色の画像」の図を参照ください。正反対に位置する色通しが互いの補色になります。

いずれにしても、これら「メインカラー」「アクセントカラー」を含めて、3色以内に押さえるようにしましょう。

グラフはシンプルにメリハリをつける

プレゼン資料において数値・データを示すとき、グラフで表現すことが多いと思います。

その際のありがちなNGを以下にご紹介します。

データ過多

情報過多の一番の犯人がデータ過多です。真面目な人ほど、「裏付けをしっかり伝えないと!」と思って、詳細のデータまで載せがちです。

ここまで述べた通り、聞き手の理解のキャパは思ったより小さいもの。

本当に必要なデータのみを載せるようにしましょう。

注目ポイントが分からない

ただ、グラフを示しただけだと、どこに注目していいかがわからず、聞き手が迷子になってしまいます。

例えば、「今年になって売り上げが急上昇している」ということを伝えたいなら、その「急上昇し始めたパート」を赤丸等で囲み、矢印で示すことで、聞き手の視線を自然に誘導してあげましょう。

グラフからのメッセージがわからない

「当社の置かれている状況」というページタイトルの図を見て下さい。

もし、「抜本的な改革が急務」のメッセージがないと、聞き手はこのグラフを話し手の意図と全く違う受け取り方をするかもしれません。

話し手は「抜本的な改革をすべき!」と思っているのに、聞き手は「大健闘している」と誤解する恐れもあります。

聞き手は、必ずしも話し手の話をしっかり聞いているわけではないので、聞きのがしたときに上記のような誤解が起こらないよう、グラフにはメッセージを明確に表現するのが親切なプレゼン資料と言えます。

知っていると得する「デザイン四原則」

このあとご紹介する「デザイン四原則」に沿って資料を作成すると、より実現しやすくなります。

四原則とは、『近接』、『整列』、『反復』、『対比』です。

それぞれを具体的に説明していきます。

デザイン四原則『近接』

ここで言う『近接』とは、図やデータ等、関連性が高い情報同士を近くに配置し、まとまりを分かりやすくする工夫です。

逆に言うと、種類の違う情報間には余白を作ることで、「違うグループ」であることをひと目でわかるようにします。

図のBeforeAfterを見比べていただくとわかると思います。

デザイン四原則『整列』

図やデータの位置を揃えて配置することで、見やすく、美しく、統一感を感じさせる工夫です

これに関しても、図のBeforeAfterを見比べて下さい。

デザイン四原則『反復』

各要素にルールを定めて、それに沿って繰り返すことです。

各スライドの見出しの位置や文字の大きさ等を揃えるなどは、その一例です。

もちろん、ページタイトルだけでなく、中身に関してもこの「反復」の原則も当てはめると、視認性・可読性とも向上し、見やすい資料になります。

やはり、図のBeforeAfterを見比べて下さい。

Beforeのスライドは、「四角」の大きさ位置、色使などがバラバラで統一感がありません。

それに比べて、Afterのスライドは、この「反復」の原則に則って作成されているので、断然見やすく、美しいと思います。

デザイン四原則『対比』

情報の優先度や種類の違いを『対比』によって明確に示すことで、聞き手がより直観的に理解しやすくなるための工夫です。

ここまで同様、図のBeforeAfterを見比べて下さい。

Beforeのスライドの表現だと、「プレゼンの技術要素」、「内容」、「構成」、「話し方」の4つが並列の関係に見えますが、そうではないはずです。これでは、聞き手に誤解や混乱を生じかねません。

一方、Afterのスライドは、論理・関係性を適切に示しており、ひと目で関係性を正しく理解できます。なぜなら、『対比』の原則に則った表現をしているからです。

具体的には、「プレゼンの技術要素」という大きな概念の中に、「内容」「構成」「話し方」の3つが並列の関係で包含されているのが、ひと目見て分かるからです。

この例のように、字の大きさや場所、囲みなどの装飾を使ってコントラストを示すことで、わかりやすくするのが、『対比』の技術なのです。

参考資料を元にプレゼン資料を作る

ここまで説明した原則に沿いつつ、ネット上に公開されているホワイトペーパー配布サイトなどのスライド資料を参考にしてプレゼン資料を作成すると、見やすい資料を比較的短時間で作成することが可能になります。

要は、先人の知恵をもらいつつ、それを応用していくことで、資料作成のコツがつかめていきます。

そうなったら、今度は自分が作成した資料を「テンプレ化」して、それを元に資料を作るようにすると、プレゼン資料作成の効率性と効果性を加速度的に向上させていくことができます。

分かりやすく、見やすい資料はあなたのプレゼンテーションを後押ししてくれるもの。

ぜひ、ビジネスの成果向上に繋げていただければと思います。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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