イオン・リートマネジメント株式会社様は、イオングループの大規模商業施設を対象とした不動産金融商品の運用を主業務としている会社です。同社では2023年6月/7月に全社員を対象にしたオンラインコミュニケーション研修、8月/9月にはマネージャー層を対象としたマネジメント研修を実施されました。講師は野村尚義が務めました。

同社取締役財経・管理管掌の豊島到様、経営管理部長の田中多映子様、経営管理部経営管理グループの黒田祐里枝様に、2つの研修を実施したねらい、研修に対する評価、手応えなどについてお話を伺いました。

オンラインでの情報の伝達・共有に課題を感じていた

― 御社では2023年6月と7月、全社員を対象にオンラインコミュニケーション研修を実施されました。この研修を企画されることにした経緯を教えてください。

田中様 多くの会社がそうだったと思いますが、当社も2020年春以降、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の為、急遽社員に出社制限を課し、リモートワークを中心とした働き方に切り替えました。その後、出社制限は撤廃したのですが、今でも出社率は半分程度であり、新しい働き方としてリモートワークが社内に根づきつつあります。

リモートワーク下でオンラインを活用しながらほかの社員とコミュニケーションを行う際に、どんなことに注意すればいいか等について学ぶ機会が無いままリモートワークを導入した為、社員間でのコミュニケーションに齟齬が生じるケースがしばしば見られました。そこでオンラインでのコミュニケーションの作法を一度社員が体系的に学んでおく必要があると考え、研修を実施することにしました。

― コミュニケーションの齟齬は、具体的にはどのような場面で生じていたのでしょうか。

田中様 わかりやすかったのは、会議の場面です。社内の会議室から会議に参加している社員と、自宅などからオンラインで会議に参加している社員との間の情報伝達や共有がうまくいかないという問題に直面しました。

会議室にいる社員同士はお互いに顔を合わせているぶん、「自分が今話していることを、他の社員はきちんと理解できているか」「興味を持って聞いてくれているか」といったことを感覚的に掴むことができます。けれども画面の向こう側にいる社員については、それを掴むのがなかなか難しかったのですね。メンバーが一体となって会議を進めていくことができないため、例えば会議の中であることが決定した時に、会議室にいた社員は「その決定事項がいかに重要であるか」を認識出来ていたのに、オンラインで参加していたメンバーはそうではなかったといったことが起きやすくなっていました。

― 研修の実施にあたって、研修会社はどのようにして選ばれましたか。

黒田様 オンラインでのコミュニケーションをテーマにした研修を行っている会社を7社ピックアップし、その中から当社の課題に合致したプログラムを提供してくれそうな3社に絞り込みました。

3社の中でもマーキュリッチさんが良かったと感じたのは、こちらから問い合わせのメールをお出ししたところすぐにお電話をいただき、当社の現状や課題感、研修ニーズについて熱心に聞いて下さったところでした。マーキュリッチさんがいちばん丁寧に、当社の事を知ろうとしてくださいました。

豊島様 研修会社を3社に絞った時点で、黒田から私のところに研修についての各社の提案内容を記したメールが届きました。その内容を読み「これはマーキュリッチさん一択ですね」と返信しました。それくらいマーキュリッチさんの提案内容が際立っていました。当社の課題を高い解像度で把握した上で、その課題解決に向けた提案も具体的でした。

コミュニケーションに求められるマインドセットを学べた

― 今回の研修は、1回3時間の研修を2回にわたってオンラインで実施しました。研修をオブザーブされていて、どんな感想を抱かれましたか。

黒田様 オンラインでの研修の場合、講師が一方的に話すだけのワンウェイの講義になりがちですが、その点野村さんは、受講者を研修の中に巻き込んでいくのがとても上手だと感じました。例えば「オンラインでは、画面での自分の顔の見え方一つで相手に与える印象がまったく変わってくる」という話をしている際に、「今画面に映っている○○さんの見え方は素晴らしいです。皆さんも参考にしてください」といったように、受講者一人ひとりを例に挙げながら説明をしていました。良い例として自分のことが取り上げられれば、モチベーションの向上につながります。またいつ自分の名前が呼ばれるかと思うと気を緩めることができませんから、受講者は緊張感を持って研修に臨むことができたと思います。

豊島様 研修では、オンラインでのスムーズなコミュニケーションの方法をいろいろと教えてくださいましたが、単に「こうしたほうが良いです」だけでなく、「なぜそうした方がいいのか」や「それをおこなった場合のメリット」「行わなかった場合のデメリット」にまで踏み込んで説明をしてくれました。説明の中に、ご自身の体験談もふんだんに盛り込んでいた分、受講者にとっても納得度の高い内容だったと思います。

総じて、受講者に「コミュニケーションに関するマインドセットの変更」を促す研修になっていたと思います。コミュニケーションの一番の基本は、相手の発言にしっかりと反応する、相手のことを考えることです。オンラインでのコミュニケーションの場合、自分の反応が相手に伝わりにくいため、とりわけこれを強く意識する必要があります。

ところが多くの人は、このいちばんの基本をおろそかにしがちです。しっかりと反応しないために、相手に対して自分の思いや意思が正確に伝わらず、それがオンライン上でのコミュニケーションのすれ違いを生み出す要因になっていると思います。

そうした中で野村さんは、「言葉」だけでなく「うなずき」や「表情」なども用いながら反応することの大切さを繰り返し述べていました。「特にオンラインのときには、リアルな場面での3倍くらい大げさに反応するぐらいでちょうどいい」という話も印象的でした。私自身は、受講者が「コミュニケーションにおいて求められるマインドセット」を学べた事が、この研修の一番の収穫だったと考えています。

マネジメント研修と上期の評価面談を組み合わせて実施

― 御社では2023年6月/7月に全社員を対象としたオンラインコミュニケーション研修を行った後、2か月後の9月にはマネージャー層を対象としたマネジメント研修を実施されました。この狙いについて教えてください。

豊島様 マネージャー職は、部下と信頼関係を築き、部下に動いてもらうことによってチームとしての成果を出すことが求められるため、より一層高いコミュニケーション力が必要となります。そこでオンラインコミュニケーションの基礎を学んだ次は受講対象をマネージャー層に絞り、「そもそもマネージャーの役割とは何か」「マネージャーとして部下とよりよい関係を築き、部下の成長やチームの成果を引き出していく為には何が重要か」といったことを学べる機会を設けることにしました。そういう意味でオンラインコミュニケーション研修とマネジメント研修は別個の取り組みではなく、連動しているといえます。

田中様 リモートワークが導入されてから、部下と直接顔を合わせる場面が減ったことにより、マネージャーは従来以上に部下とのコミュニケーションの機会を意識的に確保し、またその質を高めることが求められていると思います。研修を通じて多くのマネージャーに、部下とのコミュニケーションの重要性に気づいてもらうとともに、部下との1on1ミーティングなどの場面で具体的に役に立つ考え方やスキルを身につけてほしいと考えました。

― 実際の研修は、どのようなものでしたか。

豊島様 オンラインコミュニケーション研修と同じく、1回3時間の研修を2日にわたって実施しました。インプットだけでなく、部下との1on1ミーティングを想定したロールプレイなど、ワークにも多くの時間が割かれた研修内容になっていました。受講者が学んだことをすぐに自分自身で試すことができたのは良かったですし、自分がロールプレイをしていないときでも、ほかの受講者のロールプレイの様子を観察することで多くの気づきが得られたと思います。とても実践的な研修でした。

田中様 研修を実施した9月は、ちょうど上司が部下に対しておこなう上期の評価面談の時期に当たっていました。そこで評価面談の日時を間に挟むかたちで、その前後に1回目の研修と2回目の研修を設定するように工夫しました。

こうすれば受講者は、1回目の研修で身につけた1on1ミーティングのスキルを元に、部下との評価面談に臨むことができます。そして評価面談でつかんだ手応えや反省点を踏まえて、2回目の研修を受けるというかたちにすれば、より高い効果が期待できる研修になるのではないかと考えました。

― 田中様ご自身もマネジメント研修を受講されましたが、今回、研修と評価面談を組み合わせて実施したことは、効果があったと感じられましたか。

田中様 はい。これまでの評価面談では、部下が評価シートに書き込んだ内容に沿って話を聞いていたのですが、今回は「ほかにも○○さんは、こんなことに取り組んでいませんでしたか?」というように、部下自身も気づいていないところまで掘り下げることを心がけながらヒアリングを行うことができました。事前に研修を受けていたことで 部下との評価面談に臨む際の意識が以前とは違っていました。

― 今回、2つの研修を実施したことで、社内で何か変化はありましたか。

豊島様 一番大きいのは、社員が改めてコミュニケーションの大切さに気づいた事だと思います。

当社の課題として、業務上の役割が細分化されているために、同じ部署内でも隣の席の社員が何をやっているかわからないということがありました。そこで私の管掌下の部署においては、各社員の業務の状況を見える化できるフォーマットを作成することにしました。

こうしたフォーマットがあれば、上司は部下の状況を把握したうえで声をかけやすくなりますし、同僚同士の間でも「今、困っていることがあるみたいだから手助けしましょうか」というように、お互いにフォローがしやすくなります。ささいなことですが、以前よりも社内のコミュニケーションの量は増え、意思の疎通ができていないという状況は減ったのではないかと感じています。

― 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

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※取材日時 2024年1月
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