from 西野浩輝

今、若手の発信力を高めたいという企業が増えており、それに比例してこのテーマでの研修のお手伝いも増加しています。

企業の人材育成担当者に課題をヒアリングすると、かなり似通ったコメントが返ってきます。例えば以下のようなものです

  • 言われるまで報連相してこない
  • 会議で大人しすぎて、何も貢献していない
  • 自ら主体的に働きかけて、提案をして来ない
  • 発言を求めると要領を得ない話が続く

どうでしょう?当てはまる項目も多いのでないでしょうか?

現在の若手社員は、数年後には間違いなく会社の屋台骨を支える第一線で活躍すべき層です。なのに、このような発信力不足の現状では人材担当者として不安になるのもうなづけます。

各社とも様々な育成施策を打って、若手の強化を図っているようなのですが、実は大事な「鍵となる行為」が見過ごされていることがよくあります。

それは、現場での上司・先輩からの適切なフィードバックです。

適切ではないフィードバックの例

実際、現場の課題を掴むために若手の生の声を吸い上げてみると、上司や先輩に以下のような対応をされていることが少なくないようです。

  • 頑張って発信したのに、「そもそも君は〇〇ということをわかってないな」と根本から否定された
  • 仕事の中間報告をしたら、明らかに面倒臭そうな態度を取られた
  • 「結局君は何が言いたいの?」と詰問され続けて、パニックになった

このようなフィードバックは、せっかく育った発信力の芽を摘んでしまう行為であることは明白でしょう。

つまり、若手の発信力が育たないのは、若手自身の問題だけはなく、上司・先輩のフィードバックのほうにも問題があるかもしれないわけです。

では、そんな現場のマネジャーや先輩に対して、どのような働きかけをしていけばいいのでしょうか?

ここでは「フィードバック」に関する、効果的な3つのやり方をご紹介します。ぜひマネジャーやOJTリーダーへの教育の一環に組み入れていただければと思います。

(1)「マインド」と「スキル」は完全に分けてフィードバックすること

多くの人は、ついついマインドとスキルを一緒にして改善のフィードバックをしてしまいがちです。

そうすると、フィードバックされたほうは、スキルだけではなくマインドについても批判されたと勘違いして、「発信したこと自体が良くなかったのか?」
と思ってしまいます。
だから、この2つは明確に分けるべきなのです。

まずは若手が発信した際には、そのマインドや姿勢に対しては全肯定してあげましょう。一点の曇りもなく。

  • 「その問題意識は見事。ぜひ持ち続けてくれ」
  • 「考える良いヒントをくれたのでうれしい」

というふうにしっかりポジティブストロークを打ってあげることで、メンバーの心理的安全性を確保してあげる。そうしてこの行動を続けるよう後押しをするのです。

(2)スキルのフィードバックでは「なぜ?」をしっかり伝えること

若手の発信の仕方、言わば「スキル」に改善余地があるのなら、そこは遠慮せずちゃんと指摘する必要があります。

その際、「良い点」と「改善点」の両方から伝えるのはもちろんのこと、「なぜそうなのか?」の理由を明確に言うこと。言われた方の納得性が増すのはもちろんのこと、もう1つ別の重要な意味があります。

仮に新人の場合、まだビジネス社会での常識や価値観をしっかり理解できていません。だからこそ、この「なぜ?」のフィードバックがまさにその教育も兼ねることができるのです。

例えば、「もう少し結論ファーストで、かつ簡潔に報告してほしい」とフィードバックしたとします。

その際、「なぜなら、トークの方向性が全然分からない中で、細部を長々と話されると、相手はだんだん理解が付いていかなくなるから」といったように優しく言ってあげるといいでしょう。

(3)褒めるときには他のメンバーの前で

発信に対するポジティブな指摘を本人ひとりに留めておくのはもったいなさすぎます。

「発信する風土」を作り上げる機会として活用しましょう。

具体的には、「発信してくれて本当に助かる」という旨のフィードバックをやや大げさに、皆の前で言います。うすることで「発信すること=良いこと」、逆に言うと「発信しないこと=良くないこと」という基準をメンバー全員に刷り込むことができるからです。

まさに「発信風土」が醸成され、ひいては部署全体、会社全体の発信力向上にダイレクトに繋がるはずです。若手の発信力を上げるには、本人の教育のみならず、上司・先輩の啓蒙や風土改革まで視野に入れて施策を打つと効果性が高いでしょう。

今のリモート時代は、以前に増して「互いの発信」が重要になっています。

ぜひこれを機にテコ入れされることをお勧めします。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
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