株式会社日立アカデミー様は、日立グループ内外の研修事業や人財育成のコンサルティング事業などを展開している会社です。マーキュリッチは2012年度より、日立アカデミー様からの委託を受けて、日立製作所様の営業職を対象としたエグゼクティブプレゼンテーション研修(2021年度から「自信と魅力を感じさせるプレゼンテーションデリバリー研修(エグゼクティブの心に響く伝え方」に名称を変更予定)を担当。講師は当社の野村尚義が務めてきました。

この研修の運営にあたっている経営研修本部ラーニングセンタ技師の迫直美様に、研修の内容や狙い、2020年度に実施したオンラインでの研修に対する評価についてお話を伺いました。

プレゼンターとしての存在感を高めることをめざした研修

― まずは御社の事業概要を教えてください。

迫様 当社は、日立グループ内外の企業様の人財育成を支援する研修機関です。「研修プログラムの提供」「研修運営の支援」「人財の育成施策等に関するコンサルティング」の3本を事業の柱にしています。

研修プログラムとしては、「IT研修」や「OT研修」「ビジネススキル研修」「経営研修」などがあり、この1、2年は特にDXに対する教育ニーズが高くなっています。

マーキュリッチさんには2012年度より日立グループの営業職を対象にエグゼクティブプレゼンテーション研修の実施をお願いしてきました。

― 日立グループにおけるエグゼクティブプレゼンテーション研修の位置づけを教えてください。

迫様 日立では、プレゼンのシナリオ作成力を高めるための研修やスライドの作り方についての研修などプレゼンに関するさまざまな研修をおこなっています。

その中でエグゼクティブプレゼンテーション研修は、デリバリースキル強化(話し方強化)を目的とした営業職能研修です。エグゼクティブ層にプレゼンをおこなう場合、提案の内容が魅力的であることやロジカルに説明ができることももちろん大切ですが、これらは組織全体で取り組むこともできます。プレゼンターひとりで提案内容をすべてまとめることはありません。一方、プレゼンター自身の存在感は周りが肩代わりすることはできません。だからその教育はとても重要になってきます。

ある2人がプレゼンをした際に、提案の内容自体はそれほど変わりがないのであれば、プレゼンターがどのようにわかりやすく・自信をもって伝えるかで差は出てきます。またこれからの時代は「何が正解かわからないなかで、顧客とともに価値をつくっていく」ことが求められると我々は考えています。そのときに必要なのは“提案内容がよいから選ばれる”でなく、加えて“提案が固まる前から信頼されている”かということです。だから日々の立ち居振る舞いから信頼を蓄積できるようになってほしいと願っています。

ですからこの研修では、プレゼンターが自信・熱意・誠意を感じさせ信頼につながる伝え方ができるように、表情や話し方、姿勢、身振りといったデリバリースキルを磨くことを狙いとしています。

― マーキュリッチにご依頼いただいている理由は何でしょうか。

迫様 2点あります。ひとつは、講師である野村さん自身のデリバリー力が非常に高いことです。研修の中でも、場面に応じて声に強弱や高低をつけるなど、細かい工夫をいろいろとされていますよね。「対エグゼクティブ層に存在感を感じさせるプレゼンとはどのようなものか」を研修の中で体現されているので、受講者にとってまさにお手本になっていると思います。

もう1点はフィードバックの秀逸さです。各受講者のプレゼンテーションに対して個別具体的にフィードバックしてくれるわけですが、その品質の高さには驚かされます。

今後のことを考えて、オンラインで研修を実施することに

― 2020年度は、新型コロナウイルス感染症対策のためにオンラインで研修を実施することになりました。オンラインでの研修になったことに対して不安はありませんでしたか。

迫様 この研修がほかの研修と違うのは、受講者の存在感や表現力を高めることを目的としたものであることです。受講者がパソコンの小さな画面の中で、デリバリー力を十分に発揮できるのか。また講師である野村さんが、画面越しに受講者のデリバリー力を分析して、的確なフィードバックをおこなうことができるのか。そこに不安はありました。

ただ今後のことを考えると、エグゼクティブ層を相手にしたプレゼンにおいても、オンラインでおこなうケースが増えてくることが想定されます。であるならば研修の中でも、オンラインでプレゼンをするという経験を受講者に積ませることは、きっとプラスになるはずだと考えました。

もちろん初めての試みですから、うまくいかない部分もあるでしょう。でも最初から完璧を求めるのではなく、まずはやってみて課題を見つかったらその都度改善していくというやり方をとったほうがいいのではないかと判断しました。

― 今回は本番を前にリハーサルも実施しました。

迫様 はい。日立グループではオンラインでの会議やミーティングの際にはCisco Webexというシステムを使うことになっています。ただ一般的にはZoomのほうが圧倒的に普及していますよね。研修講師の方もZoomを用いたオンライン研修であれば慣れてきた方も増えているでしょうが「Cisco Webexでやってください」とお願いしたときには二の足を踏まれることもありえるのではないかと思っていました。

けれどもマーキュリッチさんにご相談したところ「やってみましょう」と二つ返事でお答えいただき、更に手厚く、事前リハーサルまでおこなってもらえることになりました。ZoomとCisco Webexでは機能が異なる部分がいくつかあるものの、工夫をすれば十分に対応できるという手応えをつかんでもらったうえで本番を迎えることができました。リハーサルを設定していただけたことは、不安材料を減らすうえで大きかったですね。

受講者一人ひとりの強みを活かすことを意識した指導をしてくれた

― 実際にオンラインで研修をやってみて、どのような感想を抱かれましたか。

迫様 「意外とできるものだな」と思いました(笑)小さな画面の中でも、表情や声の使い方などによって、プレゼンスを発揮することは十分に可能なのだなと感じました。また野村さんも画面越しであるにもかかわらず、対面での研修と変わりがないぐらいに、受講者のプレゼンに対して瞬時に適切なフィードバックをおこなってくれました。あの野村さんの瞬発力はすごいなと思いました。

― 研修の中で特に印象に残っていることは何でしょうか。

迫様 野村さんが受講者一人ひとりのキャラクターを早い段階で把握したうえで、それぞれの受講者の長所を活かすことを意識された指導をされている点でした。例えば「○○さんの長所は、声の穏やかさなど聴き手に安心感を与えられるところなので、それを活かすためには●●したほうがいいですよ」といったようなフィードバックをよくされていましたよね。

受講者自身もその点は印象深かったようで、受講後におこなったアンケートでも「指摘を受けてこれまで気づいていなかった部分に気づくことができた。自分の強みや弱みが何で、弱みをどのように補いながら強みを伸ばしていけばいいかが見えてきた」といった声が多く寄せられました。

特に日立の営業職の場合、謙虚で誠実な点は好感が持てるものの、力強さに欠けるために「ちょっと頼りないな」と感じさせてしまう社員が多いように感じます。野村さんはそうした受講者に対して、長所である誠実さを保ちつつも、なおかつ力強さを感じさせるプレゼンターになるためにはどうすればいいかについて、適切なアドバイスをしてくださっていました。

― 研修中の受講者の変容や成長について、何か気づいた点はありましたか。

迫様 最初のうちは見るからに自信なさげにプレゼンをしていたのに、野村さんからフィードバックを受けたあとに、急に存在感を感じさせるプレゼンができるようになった受講者がいました。おそらく本人も研修前はプレゼンに強い苦手意識を抱いていたのが、受講後は「もしかしたら自分も結構良いプレゼンができるようになるかも」と、プレゼンに対する手応えがつかめたのではないかと思います。

ただし私は、たとえその場では明らかな変容や成長が見られなかったとしても「自分はこういうところに気をつければいいんだ」という課題をつかむことができるだけでも大きな収穫だと思います。今後はその課題を常に意識しながらプレゼンに臨むようになることで、着実な成長が期待できるからです。

2021年度以降は受講対象者を営業職以外にも広げていく予定

― 今後の研修計画について教えてください。

迫様 これまでエグゼクティブプレゼンテーション研修は営業職を対象に実施してきましたが、2021年度からは受講対象を大きく広げる予定です。研修名も「自信と魅力を感じさせるプレゼンテーションデリバリー研修(エグゼクティブの心に響く伝え方)」に変更することを考えています。

日立では、営業職と技術系のプロジェクトマネージャーがタッグを組んで取引先に伺い、エグゼクティブ層に対してプレゼンをおこなう機会が多くあります。対象を広げることにしたのは、存在感を感じさせるプレゼンができるようになることが求められているのは営業職だけではないからです。今後は営業職に限らず前面に立って顧客とやりとりをする機会が多い社員全体のプレゼン力の底上げを図っていきたいと考えています。

― 最後にマーキュリッチが提供するサービスは、どんな課題やニーズをお持ちの会社に向いていると思われるでしょうか。

迫様 社内にプレゼンターやコンサルタントを多く抱える会社さんには必要だと思います。時期としては、入社後コンサルタントになる方や、エンジニアで年次高めの方などは社内外問わずエグゼクティブ層向けにプレゼンをされる機会があると思います。「信頼してもらえる力」を高めていただけると良いと思います。

― 本日はどうもありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

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※取材日時 2020年11月
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