
三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社様は、システム開発や保守運用を手がける三菱電機グループの会社です。同社では技術者育成講座の中で、2021年度よりプレゼンテーション研修、2022年度よりライティング研修、2024年度よりヒアリング研修を実施しており、いずれもマーキュリッチの野村尚義が講師を務めてきました。経営システム事業部計画部業務改善課の池田聖二様に、同社がプレゼンやヒアリング等のコミュニケーションスキル系の研修の充実に力を注ぐ狙いや、マーキュリッチが提供する研修内容に対する評価についてお話を伺いました。
注記:三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社様は、2025年4月より三菱電機インフォメーションシステムズ株式会社様、三菱電機ITソリューションズ株式会社様との統合により、三菱電機デジタルイノベーションになりました。本研修導入事例で紹介する研修は、三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社時代に実施したものであるため、旧社名での表記にいたします。
顧客への提案場面での「手戻り」を減らすために
― 御社ではシステムエンジニア(以下、SE)を対象にした技術者育成講座の中で、プレゼンテーション研修、ライティング研修、ヒアリング研修を実施しています。こうしたコミュニケーションスキル系の研修を重視している理由は何でしょうか。
池田様 当社のようなシステム開発を手がけている会社が抱えている課題のひとつに、「手戻り」の問題があります。システム開発では、お客様の要望を踏まえたうえで、SEが仕様書を作成するプロセスがあります。このときにお客様がシステムに対して思い描いている内容と、SEが受け止めた内容との間にズレがあると、仕様書の書き直し、つまり手戻りが発生します。手戻りが起きると、そのぶん工数が増加しますから収益の悪化につながります。またお客様からの信頼感も損なわれます。
逆にヒアリングの際に、お客様自身も言語化できていなかった課題やニーズをSEが上手に引き出し、それを仕様書などに反映させることができれば、お客様から「価値ある提案をしてもらった」という評価をいただけることになります。ですからSEには、お客様からの要望や要件を的確に引き出すスキルや、その内容を仕様書にまとめあげるスキル、また内容を口頭で説明できるスキルが非常に重要になってきます。そこで技術者育成講座の中で、こういったスキルをSEに身につけてもらうための研修を実施しているわけです。 また技術者育成講座は、グレード変更試験(昇格試験)の受験を予定している社員のための支援講座という役割も担っています。この試験では、業務上の課題を発見し解決策を提案する力などが測られます。その際にもライティングスキルやプレゼンスキルなどが不可欠となります。つまり技術者育成講座は、日常業務において必要とされるスキルの向上と、昇格準備支援の両方を目的としています。
― プレゼンテーション、ライティング、ヒアリングの各研修は、マーキュリッチの野村が講師を務めています。研修会社にマーキュリッチを選定された経緯を教えてください。
池田様 当社の関連会社だった三菱電機インフォメーションシステムズから、マーキュリッチさんを紹介してもらったのがきっかけです。同社では2016年より実施してきた若手SE向けのプレゼンテーション研修の講師をマーキュリッチさんに依頼しており、当社にも薦めてくれたのです。推薦の理由は「マーキュリッチさんであれば、受講者が何に悩んでいるか、どこに躓いているかを把握したうえで、一人ひとりに合わせた指導をしてくれるはず」というものでした。また講師の野村さんがSE出身で、実際の業務に即したアドバイスができることも大きかったですね。 当社ではマーキュリッチさんに、まず2021年度にプレゼンテーション研修を依頼し、22年度からはライティング研修、24年度からはヒアリング研修というように、徐々に依頼する研修のメニューを拡大していきました。
受講者のレベルに合わせた臨機応変な対応をしてくれた
― 実際にマーキュリッチが御社に提供してきた研修について、どのような評価をされていますか。
池田様 講師の野村さんが、受講者のレベルに合わせた対応をしてくれていると感じます。技術者育成講座の受講者は、20代から40代まで年齢や経験が多様であることを特徴としています。そのため同じ説明をしても、ある受講者には理解や納得ができても、別の受講者にはピンとこない場合が起き得ます。
そんな中で野村さんは、演習後の受講者へのフィードバックなどの場面で、受講者の経験や理解度に応じて、伝え方を変えてくれているように感じます。おそらく話す内容や話し方の引き出しを豊富に持っており、受講者の様子を観察しながら、状況に応じてその引き出しの中から適切なアプローチを選択されているのではないでしょうか。 印象に残っているのは、ある演習の場面で、「この演習は私には難しすぎて、取り組むことができません」と訴える受講者が出てきたときの野村さんの対応でした。すぐさま「ではこういう演習の内容ならできますか」と、別の案を提案していました。おかげで滞りなく演習を進めることができました。
― 講師の臨機応変な対応を評価しているということですね。
池田様 そうです。野村さんには「研修の中で事例を出しながら説明をする際には、できるだけSEの実務に即した事例にしてほしい」とお願いしたこともありました。そのときも柔軟に対応していただき、こちらの要望にすぐに応えてくれました。 野村さんには2021年度より継続して研修をお願いしていることにより、当社の事業概要や、SEとお客様とのコミュニケーションで起こりがちな課題などについても理解を深めていただいており、より的確なアドバイスをもらえるようになっています。実際、受講者からも「受講してよかった」という声を多く聞いており、研修の効果を実感しています。
成果発表会の開催で研修効果の定着を目指す
― 研修効果の定着を図るために、御社自身で工夫されていることは何かありますか。
池田様 当社の技術者育成講座は、1年を前期と後期に分けたうえでそれぞれ半年間実施しており、その中で受講者はさまざまな研修プログラムを受講します。その前期と後期の締めくくりの時期に、成果発表会を設けています。成果発表会では受講者は、「半年間学んだことを踏まえて、今後お客様なり事業部なりに対して自分はどう貢献していくか」というテーマで、今後の行動計画を発表します。
上司はその発表の様子をオンラインで見学しており、事業部長や副事業部長から受講者の発表に対してコメントがあります。受講者にとっては、今後の行動計画を明文化し、上司の前で発表することで、学んだスキルを実際の業務で活用していこうという意識が高まります。また、事業部長や副事業部長から直接コメントをもらえることで、自分の成長に対する会社の期待を実感でき、モチベーション向上につながっていると思います。
― プレゼンテーション、ライティング、ヒアリング研修の効果について、実感された場面はございますか。
池田様 このインタビューの冒頭に、「システム会社では、手戻りをいかに減らすかが大きな課題である」と話しました。その点当社は、近年はどの部署もおしなべて利益率が向上しており、ほぼすべての部署で利益率10%以上を確保しています。これを「研修の直接的な成果によるものである」と言うことはできませんが、研修の実施がプラスに働いているのは確かだと考えています。
また技術者育成講座は、グレード変更試験の受験を予定している社員のための支援講座でもあるわけですが、受講者の多くが実際に試験をクリアして昇格を実現しています。支援講座としての役割も、充分に果たしていると思います。
― 最後に今後の研修計画について教えてください。
池田様 現場の管理職からは、次のリーダーを育てることの難しさを聞く機会が多くあります。管理業務を持ちながら、自身でもプロジェクトに携わらなくてはいけない状況の中で、OJTなどを通じてリーダー候補の社員をじっくりと育てていく余裕がないというのです。これは当社に限らず、多くの会社が抱えている課題かもしれません。そこで、当社の業務に即した実践的なリーダー育成講座を実施できないかと考えています。
現在実施中の研修については、受講者からも高い評価を受けていますし、今のところ大きな変更は考えていません。受講後のアンケートも毎回取っていますので、そこで意見が出るようであれば、見直していきたいと考えています。
― 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。貴重なお話が伺えました。
※三菱電機インフォメーションネットワーク株式会社(現 三菱電機デジタルイノベーション株式会社 ホームページ)
※取材日時 2025年4月
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