あおぞら銀行様では2024年10月から6か月にわたり、事業法人部門の営業職約130人を対象に、組織的営業力強化研修を実施しました。

こうした大規模研修を実施されたねらいや、研修を担当したマーキュリッチに対する評価などについて、法人営業統括部長の平田晶丈様、法人営業統括部・担当部長兼人材戦略グループ長の大木亮様、同部プロフェッショナル・フェローの小池久司様にお話を伺いました。

組織の中で、中間層が薄い中、若手の育成をどう図るかが課題だった

- 今回の組織的営業力強化研修は、国内事業法人部門に所属している約130人の社員に対して、1回3時間の研修を月1回のペースで6か月にわたって行うという大規模なものでした。これほどの規模の研修を実施されたのには、相当強い思いがあったのではないでしょうか。

平田様 研修実施の背景として、事業法人部門の営業部長たちが若手の人材育成の現状に危機感を抱いていたことがあげられます。この問題は、部長層が参加する定例会議の場でもたびたび議題に上っていました。

以前は先輩社員が後輩に手厚く指導するOJTが機能していましたが、中間層が薄くなったことで、若手一人ひとりに十分な指導時間を確保することが難しくなっています。また営業部署としてより確実に成果を上げるために、管理職自らがプレイヤーとなって提案活動を行うことが多くなっている中で、若手に経験を積ませる機会も以前と比べると減少しているように思います。

若手が伸びないと、組織全体のチーム力は高まりません。しかし従来のようなOJTに頼った若手育成の手法は現状にそぐわないものになっている状況において、新たな若手育成の施策を構築する必要があるという問題意識を多くの部長が共有していました。

ー そうした課題に対して、どのような解決策があると考えられましたか?

平田様 もっとも重要だと考えたのは、「共通言語化」でした。共通言語化とは、部長から若手社員まで、部門内の社員全員が営業理念や営業姿勢に対する共通の価値観を持つというものです。また、お客様に対してヒアリングや提案などを行う際のノウハウ面の共有化を図っていくことも大事だと考えました。部門内のメンバーが共通の価値観、ノウハウを持つことで、同じ方向を向いて営業力を高めていくことが可能になります。

小池様 共通の言語があれば、経験の浅い社員でも「当行の法人営業として、お客様に対して何を大切にして、どのように働きかけていけばいいか」を理解しやすくなります。

また、上司と部下のコミュニケーションの質も向上します。上司が「このアプローチが効果的ではないか」と助言した際に、その背景にある考え方も含めて若手が正確に理解できるようになるからです。こうした相互理解に基づいた成長環境の構築が、私たちの目指したところでした。

平田様 問題は、当行の法人営業として大切にしたい価値観や、具体的な営業場面において必要となるノウハウの共有化をどのように図っていくかということでした。単発の研修では、どんなに内容が優れていたとしても、価値観やノウハウを組織の共通言語にまで高めていくことは困難です。一定の時間をかけて、大切にしたい価値観やノウハウについての「学び」と「実践」を繰り返すことが不可欠になると考えました。そこで6か月間にわたる研修を企画したのです。

  また研修は、部長以下すべての階層のメンバーに受講してもらうことにしました。なぜなら共通言語化を実現するためには、メンバー全員の参加が必須だからです。具体的には、部長以下130人の社員を部署単位で4クラスに分けて実施することにしました。

インタビューを通じて、当行の営業に求められるキーワードを抽出してくれた

― 研修会社にマーキュリッチを選んだ理由は何でしたか

平田様 今回、私たちが企画した研修は、これまで様々な研修を手がけてこられた研修会社にとっても、あまり経験したことがない内容だったと思います。そのため「階層を混在させての研修は難しい・機能しない」という理由で辞退される研修会社もありました。

そんな中、マーキュリッチさんは積極的な姿勢を示してくれた会社の一つでした。大きかったのは、契約前のミーティングに初回から講師の西野さん自身が参加してくださったことでした。

この研修は前例がないわけですから、当行と研修会社との間でまったくのゼロから研修を作り上げていく必要があります。そうした場に初回から西野さんが加わり、こちらの抱える課題や要望に真摯に耳を傾けてくれたことが、マーキュリッチさんに対する信頼感につながりました。

また西野さんは説明が非常にわかりやすく、かつ説得力のある話し方ができる方です。『この方であれば、受講者の心に深く届く納得感の高い研修を行ってくれるだろう』と判断しました。

― 前例がない研修を、ゼロからどのように形にしていかれたのでしょうか。

平田様 西野さんご自身の提案により、西野さんに当行の部長職とトップパフォーマーへのインタビューを行ってもらうことになりました。部長職に対しては「マネジメント層が若手育成に対して抱いている課題」や「若手にはどのように成長してほしいか」を、トップパフォーマーには「なぜ高い成果を上げることができているのか」「日々の営業活動でどのような工夫をしているのか」といった彼らの行動特性についてくわしくヒアリングしてもらいました。

そしてヒアリングの結果を踏まえて、西野さんには当行の営業現場の実態や課題に即した研修プログラムを提案していただきました。当行は、お客様のニーズに合わせ、さまざまなサービスをお客様向けにカスタマイズしたうえでご提案する力を伸ばしたいと考えていました。西野さんはそうした当行のニーズを、インタビューを通じて深く理解したうえで、研修の中に反映してくださいました。正直、「ここまで我々の営業の本質を掴んでくれるとは」と驚きました。

また西野さんにはトップパフォーマーへのインタビューをもとに、法人部門の組織として共通言語化したいキーワードも抽出してもらいました。

― 具体的にはどのようなキーワードが抽出されたのでしょうか。

小池様 「イニシアティブセールス」や「高速PDCA」といった言葉です。

先ほども述べたように、当行の法人営業は単に商品を売るのではなく、お客様の潜在的なニーズを掘り起こし、最適なソリューションを提案していくスタイルです。お客様が気づいていない課題や機会を見出し、様々な選択肢を示すためには、当行が主導権を持ってシナリオを描き、お客様を引っ張っていく必要があります。ですから「イニシアティブセールス」は、まさに当行の営業スタイルを体現する共通言語化したいキーワードでした。

同様に「高速PDCA」も、当行が求める営業スタイルを体現した言葉です。当行は大手銀行と比較すると規模が小さい分、スピードで勝負する必要があります。トップパフォーマーへのインタビューでは、彼らが「小さな取り組みをたくさん試み、素早く結果を検証し、次のアクションにつなげる」というサイクルを高速で回していることが明らかになりました。そこで西野さんはこの行動特性を「高速PDCA」と名付けてくれたのです。 「イニシアティブセールス」や「高速PDCA」は、実際の研修の中でも繰り返し取り上げられ、共通言語化が図られていきました。

「学び」と「実践」の繰り返しの中で共通言語を定着させる

― 研修は、当初貴行が求めていた「『学び』と『実践』を繰り返す中で、共通言語の定着を図る」内容になっていましたか。

平田様 はい、なっていたと思います。特に効果的だったのが「アクションアイデアシート」でした。これは受講者が研修を受けながら「これについてはぜひ自分も実践してみたい」と思ったことをシートに書き出し、次の研修までに実際に取り組んでみて、できたこととできなかったことを振り返るというものです。この「学び」と「実践」を6か月間繰り返せば、受講者の営業力は確実にレベルアップしていくことが期待できます。

大木様 私も「学び」と「実践」のサイクルは確実に機能していたと思います。営業現場では、研修で学んだことを受けて、研修期間中から行動に変化が見られるようになっていました。例えばお客様との面談において、以前は管理職が中心となって話をして進めていたケースが多かったのですが、場面に応じて若手に担わせることが増えました。これは共通言語化によって、管理職と若手が営業スタイルやノウハウを共有できるようになったことが大きいと思います。管理職は「この部分については、若手の成長のために任せてみよう」と比較的安心して任せられるようになり、若手も求められる営業の方向性が明確になったことで、自信を持ってその役割を担えるようになりました。

2025年度は他の法人部門で組織的営業力強化研修を実施予定

― 改めて研修を振り返ってみての感想と、現在の状況について教えてください。

大木様 受講者は6か月の研修期間中、「学び」と「実践」を繰り返す中で成長実感を掴むことができたと思います。現在は研修で学んだことを定着化させるフェーズに入っています。具体的には、事業法人部門の各営業部ごとに「研修で学んだことのうち、チームとして特に何に重点的に力を入れるか」という目標を設定してもらい、日常業務の中で習慣化してもらう取り組みを行っています。

― 今後の展望については、どのように考えていますか。

平田様 2025年度は、この経験を踏まえ、他の法人部門でも6か月間の研修プログラムを実施することになりました。このように研修の横展開が始まろうとしています。もちろん講師は、西野さんに依頼する予定です。

また西野さんには、当行の研修体系全体に関するコンサルティングもお願いしています。当行には様々な研修プログラムがありますが、それらをより効果的に体系化し、実効性を高めるためのアドバイスをいただきたいと考えています。西野さんは今回の研修を通じて、当行のビジネスモデルだけでなく、部長から担当者まで各レイヤーの社員の行動特性や価値観をつぶさに見てこられました。当行に対する深い理解を持ちつつ、同時に客観的な視点を有する西野さんであれば、私たちの研修体系を俯瞰的に見直す際の最適なアドバイザーになっていただけるのではないかと期待しています。

ー 本日は、貴重なお話を伺うことができ本当にありがとうございました。

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※取材日時 2025年5月
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