from 西野浩輝

今回のコラム記事は以前のコラム記事「古舘伊知郎さんに学べることと、真似てはいけないこと」に続いて「真似る」を題材にした話です。

真似るためには、当然「お手本」が必要です。また、お手本となる人を選ぶにもコツ、注意点があります。

安易に選ぶと得るものが少なくなるだけでなく、場合によってはマイナスの影響を受けてしまうことがあったります。

そこで、真似る対象者の見つけ方・選び方を、私の体験も交えながらお伝えします。何かの分野で成長したい、誰かお手本になる人を見つけたいと考える時のヒントにお役立てください。

なぜ「お手本」を見つける必要があるのか

お手本は「ロールモデル」とも呼ばれ、自分の成長を加速してくれる触媒のような役割を果たしてくれます。特に、プレゼンテーション力を伸ばしたい場合は重要です。

なぜか?

伸ばすべき行動やスキルのイメージが付きやすくなるからです。

例えば、自分のプレゼンテーションを見た上司から「もう少し元気に話した方が良い」とアドバイスされたとします。ただ、それだけだと「具体的に何をどうすれば元気に見えるか?」「どの程度元気に話すとちょうどいいか?」といった点で、イメージが湧きません。

そこで、ロールモデルの登場なのです。

お手本となる人のプレゼンテーションをよく観察することで、「どんな場面で、どんな立ち居振る舞いをするといいか?」が具体的にイメージしやすく、圧倒的に真似しやすくなります。

Wantの視点でロールモデルの候補を見つける

ではどのようにして、適切なロールモデルを見つけるといいのでしょうか?

以下に、正しい選び方としての「WantーCanーMust」理論をご紹介します。

まずは、「Want」です。

「この人うまいなぁ。私もこんな風に話したい」と思う人を探そうということです。

私が若かった頃、英語プレゼンに関しては、Sさんがロールモデルの1人でした。

Sさんは、ネイティブスピーカーの前でも堂々と英語でプレゼンテーションができ、周囲から尊敬を一身に集めていました。私はそんなSさんの一挙手一投足にまで注目し、真似しようとしました。

正直、Sさんからはほぼ何も教えてもらわなかったのですが、ロールモデルとして身近で観察することができたおかげで、どんどん吸収していけました。

今自分が英語プレゼンテーションを教えられるようになったのは、Sさんのおかげと言っても言い過ぎではありません。

やはり、「憧れ」というのは自分を引き上げてくれる強力なエンジンになります。

まずは「Want」の観点で、数人のロールモデル候補を見つけてみましょう。

自分の個性に近い人をCanの観点で見つける

次は、「Can」です。

「できること」を少し再解釈して、「自分のらしさ・個性を知り、それに近い人をお手本として見つける」ということです。

プレゼンテーションでは、自分らしさや個性といった「人となり」が伝わると、聞き手は親近感を感じます。そういう意味で、「らしさ」を適切に表現できることは大事なのです。

では、どのようにして自分のらしさに合った人を見つけるのか?

ファーストステップは、自分のプレゼンスタイルの棚卸です。

あなたはこれまで、「○○さんって、××な感じですよね?」と言われたことがあると思います。

例えば、

 ・知的
・ダイナミック
・落ち着いている
・どっしりしている
・明るい

等、いろんな言葉で表現されてきたはず。それらを思い出します。

次に、その印象を強く出している人をロールモデル候補としてピックアップします。

おそらく「Aさんの○○という印象」「Bさんの××という印象」というように、複数挙がるでしょう。その上で、「どういう所作や行為がその印象を出しているか?」を分析し、それを取り入れられたら完璧です。

ロールモデルを候補の絞り込みはMustを意識する

最後に、「Must」です。

ここで言う「Must(~なければならない)」は、「今の立場において周囲に求められる印象」と捉えるといいでしょう。

例えば、社長であれば力強さを感じさせるべきですし、銀行員なら誠実さをしっかり感じさせるべきです。

「Must」は、言わば「間違った人を選ばないためのフィルター」のような役割です。

例えば、ある銀行員の方がダウンタウンの浜田雅功さんの大ファンだとします。

いくら好きで憧れるとしても、やはり立場を考えると、浜田雅功さんを真似た「がらっぱち」のキャラでプレゼンテーションするのは、信用問題になりかねません。

やはり、もう少し「誠実なキャラ」の人をロールモデル候補としてピックアップすべきです。

「Want」「Can」「Must」の3つ輪の交点はどんな人?

さて、ここまでいろいろな候補が出たと思います。

その中で「Want」「Can」「Must」の3つ輪の交点に位置する人があなたに相応しいロールモデルです。

ひょっとしたら、まだぴったりの人が見つかっていないかもしれませんが、ご安心ください。アンテナを立てて、日々過ごすと、あっという間にたくさんの候補が見つかるはずです。

ぜひお試しあれ!

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
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