プレゼンの際に「えー、あー」という言葉、いわゆる「言葉のひげ」を頻発させながら話す人がいます。あまり恰好よくはないし、やや聞き苦しいかもしれません。
この「言葉のひげ」に関して、先日こういうことを言っている人がいました。
「中学校のときの校長先生は、話をするときにやたら『えー、あー』を言うので、気になって仕方がなくなり、話が頭に入って来ませんでした。だから、『えー、あー』は極力撲滅しましょう」と。
一見正しいように聞こえるかもしれません。
でも私はその話を聞いて、「『言葉のひげのせいで校長先生の話が頭に入らない』というのは本当?」と疑問を抱きました。
単に校長先生の話がつまらなかっただけではないかと。
つまらないから集中できず、それ以外のこと、例えば「えー、あー」という言い回しが気になる。気になりだすと、ますます話に集中できない。
つまり、話に集中できない根本原因は「話がつまらなかったから」だと思います。
プレゼンテーションにおいて本当に大事なこと
なぜそう言えるのか?
テレビのコメンテータが話している場面をよく観察してみてください。実は「えー、あー」を結構言っている人が少なくありません。なのに、気にならないどころか、気づかないくらいです。
その理由はシンプルです。
話が面白いから。
それが校長先生の話と決定的に違う点です。
ここで私が言いたいこと。
それは、「プレゼンテーションにおいて本当に大事なことは何か?」ということを捉え間違わないで欲しいということなのです。
磨くべき場所は、「えー、あーを撲滅すること」なんかじゃありません。「面白い話」、もっと正確に言えば「聞き手にとって価値を感じさせる話を
すること」なのです。
考え見てください。
つまらない話を「えー、あーを全く言わず」「いい淀みなく」「かっこよく」話すことに何の意味があるのでしょうか?
プレゼンテーションにおける一丁目一番地は、「聞き手に価値のある内容を分かりやすく伝えること」。
まずはそこにフォーカスを置く。
「えー、あー」撲滅はそのずっとあとでいいのです。
「言葉のひげ」を取るのはむしろマイナスに働くことも
「言葉のひげ」の話はここで終わりません。
実は、「えー、あー」を撲滅する行為はむしろ危険でさえあるのです。
本来は言葉のひげを無くして、そのぶん「間」に変えるのが望ましいのですが、これがなかなか難しい。
だから、多くの人はただ単に「ひげ」を無くすだけになります。すると、話すスピードが速くなりすぎて、聞き手が完全に置いてきぼりになります。
息をつく暇もないくらいのマシンガントークで話されたとしたら、聞き手としてどうなるでしょう?
とてもじゃないけど内容を理解できず、伝わるものも伝わりません。
これでは、改善どころか「改悪」です。
だったら、まだ「言葉のひげ」があり、その時間を使って聞き手が話の内容を理解・咀嚼できる方が、よっぽど良いプレゼンになります。
とはいうものの、多すぎる場合はさすがにマイナスです。
一文に何か所も「えー」が入れば、文意そのものを捉えるのが難しくなります。
そういう方は、頑張って半分に減らしてみるのはどうでしょう?
「言葉のひげ」を減らしていく方法
では、どうやって減らしていけばいいのか?
答えは日常にあります。
普段のちょっとした会話で、言葉のひげを減らしていくのです。
プレゼンテーションで「えー、あー」を言ってしまう人は、それが癖になっています。ということは、間違いなく日常も言っているはず。
本番のプレゼンテーションで「言葉のひげを取ろう」と思うと、そこに意識が行ってしまい、パニックになってしまいます。
だからこそ、日常の少し余裕ある会話の中で、少しずつ減らしていくのです。
すると、いつのまにか半分くらいに減っています。
そうなったら、もう何の問題もありません。
先ほど言った「テレビタレント」のように、少々「ひげ」があっても誰も気づかないでしょう。
繰り返しになりますが、効果的なプレゼンテーションのためにすべきことは、「ひげ撲滅」などでなく、聞き手に価値ある話をするためにスキルを磨くこと
なのです。
すると、いつのまにか「えー、あー」の悩みなど解消しているでしょう。
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。