from 西野浩輝

ビジネスパーソンにとって重要なスキルの一つであるプレゼンテーション力。

昨今では、事業家と投資家をマッチングさせる「ピッチコンテスト」も全国各地で多数開催されており、自社の技術やサービスをプレゼンしてビジネスチャンスを獲得する方法が盛んになっています。

プレゼンテーション力を磨くために、最近注目が高まっているのがスピーチコンテストです。コンテストに挑戦することで、プレゼン力、スピーチ力を向上させようとする人が増えています。

また、企業によっては社内でスピーチコンテストを開催しているケースもあるようです。

以下に「スピーチとプレゼンテーションの違い」、および「スピーチ力を向上させるきっかけとなるスピーチコンテストの詳細」について解説します。

スピーチとプレゼンテーションの違いとは?

プレゼンテーションとスピーチの違いは、表現方法が言語のみかどうかです。

プレゼンテーションの場合、スライド資料を投影したり、配布資料を用意したりと様々な視聴覚手段を用いながら説明を行います。

対して、スピーチは英語で「話すこと」「演説」を意味する名の通り、基本的に話す言葉のみで聴衆にメッセージを伝えます。

「聞き手に伝え、共感や理解を得る」という意味では共通していますが、資料による補助が得られない分、スピーチはより論理的な話の組み立てや言葉の表現力が問われます。

そのため、プレゼンテーション力の向上を目指すビジネスパーソンは、多くの場合、スピーチの練習にも力を注いでいるのです。

印象に残る優れたスピーチの特徴とは

日本の学校教育では、従来スピーチやプレゼンテーションなどの「スピーキング」はほとんど実施されていませんでした。反して、海外ではスピーチコンテストなども頻繁に開催されており、ビジネスの必須スキルとして扱われてきました。

そのため、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズやオバマ大統領など、スピーチの名手と呼ばれる人たちの大半は英語のスピーカーです。

彼らのスピーチはYouTubeなどでも見ることができますが、観察すると以下の共通点があることに気づきます。

  • 声量の緩急があり、語りかけるような話し方から自信が伝わってくる
  • 具体例が豊富に盛り込まれており、オリジナリティにあふれている
  • キーワードを繰り返したり、身振り手振りを上手く使うことで、ダイナミックさを感じさせている

彼らのスピーチは、論理的にもわかりやすく、聞き手の感情に訴えかけてくる内容に仕上がっています。

もちろん一朝一夕ではマスターできるほど簡単ではありませんが、スピーチはコミュニケーションスキルの一つのため、訓練を重ねれば確実に力を高めることができます。

世界の名スピーカーから技術を学び、日頃のプレゼンに活かすことができれば、商談や交渉もうまく進むようになり、ビジネスの成果に着実につながっていくでしょう。

スピーチ力を上達させるためのポイント

スピーチを上達させるためには、とにかく練習を繰り返し、場数を踏む必要があります。後述するスピーチコンテストやピッチコンテストにもぜひ挑戦して、経験値を増やしましょう。

スピーチの場合、事前に原稿を用意しておくケースがほとんどです。1分間スピーチであれば、目安300文字、3分間スピーチなら900文字前後で原稿を用意します。

ただし、いきなり原稿を作るのでなく、まずは話の構成を明確化します。その際の基本の構成パターンは以下の通りです。

  1. Overview(概要):話の導入から先に結論を示す
  2. Body(本論):問題提起を行い、課題の分析から解決策を提示し、結論へと導く
  3. Summary(要約):話してきた内容をまとめ、結論を述べる

この構成では「結論」が何度も出てきていますが、それが味噌なのです。

表現を工夫しながら重要ポイントを繰り返し述べることで、聞き手にメッセージが深く刻み込まれ、印象的なスピーチに仕立てることができます。

さらに自分自身が経験してきたストーリーを具体的に描写したり、人の心に響くエピソード等を随所に盛り込むことで、聞き手の感情を揺さぶり、共感を起こします。

スピーチの構成は上記以外にもいろいろありますが、まずは基本の型として上記の「3部構成」を覚えるといいでしょう。

スピーチ力をいち早く向上させる練習方法としては、名スピーカーの「完全コピー」を行うのが効果的なものの1つです。話す内容だけではなく、声のトーンや抑揚、身振り手振りまで全て模倣することで、名スピーカーの話法を吸収するのです。

英語のスピーカーを真似するのが難しい場合は、日本国内の優れたセミナー講師やスピーカーを観察して取り入れてもよいでしょう。

日本国内のおすすめスピーチコンテスト・ピッチコンテスト

国内の優れたスピーカーを観察し、話法を学ぶ意味でも、スピーチコンテストへの参加は非常に有意義なトレーニングとなります。また、スピーチコンテストよりも開催機会が多いピッチコンテストへの参加もおすすめです。

ビジネスパーソンがチャレンジしやすいスピーチコンテストやピッチコンテストの情報をまとめました。

松下幸之助杯スピーチコンテスト

パナソニックホールディングス株式会社を創業した実業家であり、思想家・哲学者・教育者としても有名な松下幸之助氏の理念を受け継いだスピーチコンテストです。2020年から開催されており、2022年10月5日の開催で第3回を迎えます。

スピーチテーマは、「2030年の世界に向けたビジョンと実践 ~SDGsの17の開発目標に取り組もう~」。小論文の審査を突破した出場者たちが、SDGsの開発目標に基づいた具体的な実践活動をスピーチします。

出場資格は、満30歳以下の児童・生徒・学生もしくは社会人となっており、若手の社会人が挑戦しやすい内容です。年齢的に出場できない人も、決戦大会の録画を無料で視聴できるため、スピーチを学ぶ場としても最適でしょう。

トーストマスターズ・スピーチコンテスト

トーストマスターズは、スピーチを学ぶための世界的な非営利団体であり、世界各地で何万という数のクラブ(支部)が存在します。日本でも数十のクラブが英語、あるいは日本語で活動しています。

各支部で定期的に会合が行われ、メンバーはそこでスピーチの練習をするのですが、年に1~2回大規模なスピーチコンテストが開催されます。
ある一定の経験を踏んだメンバーは誰でもコンテスト参加は可能で、勝ち抜いていくと全国大会にも出場できます。

社会人であれば誰でもクラブ入会は可能なので、入り口としての敷居は低めだと言えます。まずはクラブに入会し、少し自信がついたところでコンテストに挑戦するのが、おススメのステップの踏み方です。

もちろん、コンテストを聴衆として見るだけでも勉強になるので、その目的で入会・参加するのも1つの効果的な方法でしょう。

Morning Pitch

Morning Pitchは、ベンチャー企業と大企業の事業提携を生み出すことを目的としたピッチイベントです。毎週木曜日、午前7時~9時の時間帯に開催されています。

毎週5社のベンチャー企業が、大企業・ベンチャーキャピタル・メディア等のオーディエンス約200~300名に対しピッチを行っており、会場参加のほか、LIVE配信を視聴するリモート参加も可能です。

純粋なスピーチコンテストではありませんが、参加機会が多く、様々な企業のプレゼンテーションを観察できるため、貴重な学習の場になるでしょう。

参加資格者は、大企業(上場会社及びその子会社・法定監査を受けている会社)、ベンチャーキャピタル、金融機関、メディア、官公庁/地方自治体に限られています。

逆に言えば、大企業に所属している方であれば参加可能なため、条件があえばぜひベンチャーピッチを視聴してみるとよいでしょう。

まとめ

コミュニケーションスキルの中でも、苦手と感じている人が多いスピーチスキル。まだまだ国内ではスピーチコンテストの場も少なく、スキルを磨く機会が少ないと感じている人もたくさんいます

その分、スピーチスキルやプレゼンテーション力を磨ければ、ライバルと大きな差がつきやすいのも事実です。

英語がある程度話せる人であれば、海外には名スピーカーがたくさんいるため、ぜひ積極的に模倣してみるとよいでしょう。英語が話せない人でも、社内外の研修やセミナーの機会をうまく利用して、優れた講師の話法を吸収するだけでもスピーチ力は向上します。

機会があれば、社内でスピーチコンテストの場を設けるなど、人前でスピーチを行える機会を増やせれば理想です。それが難しい場合は、まず日頃の社内外のコミュニケーションの中で説明力を磨いていくのもおすすめです。

スピーチ力をはじめとするコミュニケーションスキルを、ぜひ日頃の業務の武器にしていきましょう。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

西野浩輝プロフィールはこちら