「営業力を組織として底上げしたい」

そんな課題に応える形でスタートした今回の6ヶ月に渡る研修プロジェクト。単なる知識のインプットではなく、現場での実践を繰り返しながら、営業の「型」を組織全体で共有し、定着させていくことを目的とした、いわば伴走型の育成プログラムです。

受講者は総勢120名以上。しかも、部長を含めた各部署のメンバーが「チーム単位」で受講するという、非常にユニークな形式を採用しました。

個人が学ぶだけでなく、部署ごとに共通言語を持ち、営業スタイルを揃えていく。それにより、組織としての営業力を進化させることを狙いとした取り組みです。

そして、その集大成として行われた「成果発表コンテスト」では、我々の予想を超える結果が生まれました。

「…あいつ、こんなにすごかったっけ?」

審査員の1人である、営業トップの常務がある若手の発表を聞いた際、思わず口にしました。普段から部下を見ているはずの常務ですら、成長ぶりに驚きを隠せなかったほどです。

さらに、コンテストの翌日、研修のご担当者からもこんなメッセージが届きました。「新人研修で担当していた○○君や△△さんが、ここまで成長しているのを見て、感無量でした。」

今回のコンテストで、最優秀賞や各賞を受賞したのは、ほとんどが若手メンバー。当初の予想を覆し、管理職やベテランを押さえ、堂々の結果を出したのです。

この光景に、社内の空気が変わるのを感じました。

研修の設計:本気モードを引き出す仕掛け

今回の研修が、一過性のものにならずに大きな成長につながった理由は何だったのでしょうか?

大きく3つあると私は考えます。

1.部署単位で受講することの効果

この研修は、よくある「階層ごとに集まって行う研修」ではなく、同じ部署のメンバーが揃って受講するという形を取りました。

これにより、

  • 営業の共通言語が生まれた(「イニシアティブ・セールス」「相互  フィードバック」「高速PDCA」などのキーワードがしっかり浸透)
  • 上司と部下の視点が一致した(「なぜこの手法が重要か?」を共通認識として持てた)
  • 若手からの「突き上げ感」が生まれた(成果を出す若手の活躍が、ベテラン勢に刺激を与えた)

組織全体が「成長の波」に乗るためには、個々のスキルアップだけでは不十分。共通の土台を持つことで、現場での営業活動が『個人戦の集合体』から『真のチーム戦』へと進化していくのです。

2.徹底的に寄り添い、伴走する

この研修では、毎月のセッションごとに学んだことを現場で実践し、その成果を共有するプロセスを繰り返しました。ただ気づきを得るだけではなく、実際に行動し結果を振り返る。「できた」「できなかった」という事実に向き合い、受講者相互および講師からのフィードバックを受けて、次のアクションへとつなげる。

この「伴走型アプローチ」により、

  • 「学びの適用→改善」を繰り返すことで、営業の「型」が定着した
  • 実践の中で生じた課題を解決していくことで、確実に階段を登って いけた
  • 「頑張れば変われる」という確信を持てた

こうした積み重ねが、最終的な飛躍へとつながりました。

3.最後にコンテストを設定し、本気モードを加速

実は、研修開始時から「最後にコンテストがある」と伝えていました。

漫然と研修を受けるのではなく、最初から「成果を競う場」があると知っていることで、行動の質も量も違ってきます。

この「成果コンテスト形式」により、

  • 「せっかくだから、コンテストで勝ちたい!」という意欲が生まれた
  • 「実践の精度」を上げるため、より真剣に取り組む姿勢ができた
  • 最終発表の場が「晴れ舞台」となることで、ポテンシャルが最大限引き出された

この「本気モードの仕掛け」が、驚くような成長を生み出したのです。

人材育成とは、可能性の発掘

この取り組みで組織全体の成果・成長が図れたことは、非常に喜ばしいことです。ただ、同じくらいに大きかったのは、新たな人材の可能性を発掘できたことではないでしょうか?

人材育成とは、「伸びる可能性のある人材を、どう発掘し、どう開花させるか」。

今回の研修は、まさにそれを体現するような時間でした。

特に印象的だったのは、「人の成長」とともに、「場」も育っていったことです。そして、その成熟した場の中で、人が人を見つけ、認め合い、開花していく。そんな営みが、この6か月を通じて自然と生まれていたように思います。

私にとっても、多くの喜びと学びをくれた、貴重な経験でした。

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西野浩輝

「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。

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