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アルバック・シンガポール社は、マーキュリッチの西野浩輝を講師とするプレゼン研修を実施した。この研修では受講者が、シンガポール人・タイ人・マレーシア人・フィリピン人・ベトナム人・日本人など多様な国籍により構成されていたため、英語を用いて研修がなされた。研修導入の狙いや、その評価について、アルバック・シンガポールでManaging Directorを務める山口正樹氏に話を聞いた。

事業概要と研修の内容

- 御社の事業概要と、今回企画した研修について教えてください。

当社は主に真空装置の製造を行っているメーカーです。国内のみならずアメリカ、ヨーロッパ、中国、台湾、韓国など世界各地で事業を展開しています。私が現在責任者を務めているシンガポールの現地法人については約10年前に立ち上げ、現在は東南アジア各地で真空装置の販売やカスタマーズサポートなどを行っています。

今回企画した研修はプレゼンテーション研修です。受講者は東南アジア各地で営業活動に従事している営業担当者と、シンガポールのオフィスでマネージャー的な立場にいる者の約25名です。日本人駐在員だけではなく、シンガポール人やタイ人、マレーシア人、フィリピン人、ベトナム人のスタッフにも受講してもらいました。

受講者は多国籍であるため、講師の西野さんには、日本語ではなく英語で研修をしてもらいました。

「セミナーで私が学んだことを、うちのマネージャー・営業にも学んでほしい」と思った

- 今回の研修実施のきっかけは何ですか

以前シンガポールで開催されていた公開セミナーに私が一受講者として参加した際、西野さんが英語プレゼンセミナーの講師を務めていらっしゃったのがきっかけです。

そもそもそのセミナーを受講したのは、自分自身のプレゼン力を伸ばしたいと思ったからです。私は約2年前にシンガポールに赴任したのですが、実は私の前任者までは、会社の方針や目標を、ローカルスタッフを含めた全社員の前で英語でプレゼンするということをしていなかったみたいなのです。

しかしこれでは会社のビジョンや戦略を社内に浸透させることは難しいと考え、私のときから全社員の前でプレゼンをすることにしました。ただしそのためには私自身のプレゼン力をもっと上げる必要があると考え、セミナーに参加しました。

そして実際に参加してみて感じたのが、「ここで私が学んだことを、ぜひうちのマネージャー層や営業担当者にも学んで欲しい」ということでした。そこで西野さんにお声がけをしてシンガポールの当社のオフィスにまで来ていただき、研修を実施したわけです。

プレゼン研修導入の狙い

- なぜ「マネージャー層や営業担当者にもプレゼンについて学ばせたい」と思ったのですか?

理由は大きく二つあります。

先ほども話したように私は全社員の前でプレゼンを行っていますが、各部門のマネジャークラスの人間はどうかというと、自分のチームのスタッフに対してプレゼンを行っていないんですね。リーダーがチームメンバーの前で語れないということは、チームをつなぐ術がないということです。

「これではいけない」と考えた私は、一度マネージャクラスの人間にみんなの前でプレゼンをやらせてみたことがありました。その結果はどうだったかというと、日本人のマネージャーもシンガポール人のマネージャーも、正直に言って「何が言いたいのかよくわからないプレゼン」になっていました。

会社としての方針や目標を全社員にすり込むためには、トップが全社員に対してプレゼンを行うだけではやはり不十分です。各部門のマネージャーも、トップ方針を元に彼らなりのメッセージとして咀嚼し直し、それをプレゼンするべきなのです。そういったことを通じて方針やビジョンを何度も効果的に伝えていくことで、初めて全社員に浸透していくものだと思います。

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そのためにもマネジメント層の人間のプレゼン力を高める必要があります。
これがプレゼン研修を実施しようと思った理由の一つです。

もう一つの理由は、営業担当者の社外向けプレゼン力の強化です。

当社では取引先へのプレゼンについては、従来は日本の本社で作成した資料をそのままシンガポールに持ってきて、プレゼン用の資料として使用していました。

せいぜい日本語の資料を英語に翻訳するぐらいで、ほとんど編集や加工をしないまま使ってきました。そして実際のプレゼンも、その資料の順番に沿って進めていました。

問題はこうしたプレゼン資料が、プロダクトアウトのスタンスで作られているものだということです。「弊社の製品はこんなに優れているので、ぜひ買ってください」というレベルにとどまっています。

相手の決断を促すプレゼンをするためには、お客様が抱えている課題やニーズについての仮説を立てたうえで、「この製品をこんなふうに使うと、御社にとってこういうメリットがありますよ」というメッセージをしっかりと伝えられなくてはいけない。しかしながら、これまでのうちの営業担当者にはそうした意識が希薄でした。

そこでお客様の課題やニーズを捉え、十分に深い分析をした上で、プレゼンのシナリオを組み立てていく力、そしてそれをベースにした資料を作成する力を高めて欲しいと考えました。

これがマネージャー層と営業担当者を対象にプレゼン研修を実施しようと思った大きな理由です。

なぜマーキュリッチ・西野を選んだのか

- 聞けば聞くほど、御社にとってプレゼンテーションがビジネスの中核であることが伝わってきます。では、そのプレゼン能力を高めるという大役に西野を選んだのはなぜでしょうか?

最初に私自身が1人の受講者として、西野さんの英語プレゼンセミナーを受講したときのインパクトが非常に強かったからです。もちろん、インパクトだけでなく、すぐに使えるHowToもたくさんあると感じました。

例えば、西野さんは、「プレゼンは、『イントロダクション』、『ボディ』、『エンディング』の3つで構成されるサンドイッチ・フォーマットで組み立てると、自分が伝えたいことを相手にわかりやすく伝えることができる」という話をしていましたよね。

私たちもプレゼンを行うときには当然シナリオを作ってから臨むのですが、シナリオの組み立てに苦労することが少なくありません。けれどもサンドイッチ・フォーマットというシンプルな型に当てはめて組み立てを考えれば、誰でも一定レベルのプレゼンを行うことが可能になります。

これはとても新鮮な発見でした。ですからこの型をぜひうちのスタッフに習得させたいと思ったのです。

- 今回の研修は日本人以外の受講生が多かったこともあり、当然ながら英語を使って行いました。英語によるプレゼン研修であれば、シンガポールにもイングリッシュ・スピーカーの講師はたくさんいるはずです。それなのに、あえてノンネイティブである西野を講師に起用した理由は何かありますか。

西野さんはノンネイティブであるにもかかわらず、ネイティブにまったく引けをとらないプレゼンを英語で行える力を持っています。その姿を受講者に見せることで、彼らに刺激を与えたいと思ったのが一番の理由です。

日本人のスタッフの多くが、英語力にもプレゼン力に苦手意識を抱いています。そうしたなかで西野さんの姿を見れば、「日本人でも正しい努力をすれば英語プレゼン力を高めることができるんだ」という励みになると思います。

またノンネイティブとして英語力やプレゼン力をどのような手順でどう高めていけばいいかを、西野さんをロールモデルとしながら学ぶこともできるはずです。

一方、シンガポールやマレーシア、フィリピンといった英語が日常的に使われている環境で育ってきたスタッフについては、言語で苦労する必要がないわけですから、本来はそのぶんプレゼン力を鍛えることにエネルギーを注ぐことが可能なはずです。

そこで西野さんを見てもらうことで「ノンネイティブでも、日本人でも、こんなにレベルの高い英語プレゼンができる人がいるのだから、自分も負けてはいられない」という刺激付けにしたいと思ったのです。

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研修への評価

- 当日のプレゼン研修の内容についてはどのように評価されていますか。

当社のようにこれまで社員のプレゼンスキルの育成にあまり力を入れてこなかった会社にとっては、プレゼンの基礎基本から教えてもらえたという意味で、とても有意義な研修になりました。

今回は当社の営業担当者とマネージャー層に受講をしてもらったわけですが、営業担当者はまだしも営業経験のあまりないマネージャーについては、これまでプレゼンをした機会も少なければ、プレゼンについてあまり考えてきたこともなかったと思います。

しかし今後はプレゼンスキルを磨き、会社の方針や自分の考えをスタッフに向けてもっと積極的にかつ効果的に発信できるようなってもらわなければ困ります。

ULVAC3そうしたなかで、サンドイッチ・フォーマットのようなプレゼンの型を使えば、自分のメッセージを相手にわかりやすく伝えることができるようになることを学べたのは、彼らにとって目から鱗が落ちる思いだったはずです。

また研修のなかに、全員がプレゼンをするという演習を組み込んでくださったのも良かったですね。プレゼンの内容についてスタッフ同士でお互いにアドバイスをしあうことによって、プレゼンを行う際の大事なポイントや改善点に気づくことができます。

プレゼン力を高めていくうえで、非常に効果がある手法だと感じました。

反省点と他社へのアドバイス

- 逆に「もっとこんな研修にすればよかった」という反省点やさらなる要望はありますか。

今回の25人の受講者は、プレゼンに対する意識や経験やスキルに、かなりのばらつきがありました。

そのため後で受講者に感想を聞いてみると、「すごく学びの多い研修だった」という声が多い反面、「受講者のレベルをもう少し揃えて欲しい。そうすることで、もっと効果的に学び合えるはず」という声も聞かれました。受講者のレベルを事前に把握したうえで、もう少し事前に方策を練っておけばよかったと思いましたね。

今振り返ると、仮に受講者にレベル差があったとしても、演習の場面で上級者にリーダー役になってもらうことなどによって、上位層の受講者も下位層の受講者も、同等の学びを持ち帰れたのではないかと思います。ただ今回はやや特殊な状況で、研修の時間が短かったので、そうした工夫ができる余地があまりなかったとは思いますが。

したがって、研修を成功させるためには、受講者のレベルを事前に把握しておくとともに、適切な研修時間の設定も重要になってくると思いました。

- 御社と同様に東南アジアに進出している日系企業が現地でプレゼン研修を実施する際に、何かアドバイスをしておきたいことはありますか?

今回当社では、日本人駐在員とローカルスタッフの混成で研修を受けましたが、受講者を日本人だけに絞るという選択肢もあります。

しかし英語プレゼン研修に関していえば、日本人同士が英語でコミュニケーションをとるとなるとどうしても照れが入ってしまいます。混成にした方が、余計な照れくささが抜け、日本人社員も自然と研修に入り込むことができると思います。そういった観点で、やはり混成の方がいいかなと思います。

- 本日はお忙しいなか、貴重なお話をいただきありがとうございました。

  

本研修に受講された方の声

  • Improve skill through simulations and exercises.
    Learned how to prepare the presentation slide such as structuring of the topic, how to prepare the introduction,body and conclusion.

    Alice Chong (HR & Admin Executive,Singapore)
  • Clear picture on preparing a better presentation materials as well as presenting manner.
    Noor Azry Bin Ishak (Assistant Manager,Malaysia)
  • Overall presentation is good. Company should organise more of this kind of activities.
    Alex Teh (Senior Manager,Singapore)