教育プログラム構築 6BOX活用のススメ

教育プログラムの見直しほど、大変なものはない

人事・教育担当者の大切な仕事の一つに、「社内教育プログラムの見直しと再構築」があります。

事業環境の変化などとともに、求められる社内教育の内容は常に変わっていきます。

そのため担当者にとって、教育プログラムの定期的な見直しは避けては通れないもの。

ところがこれがなかなか大変です

職種別、階層別、テーマ別に、必要となる研修をさまざまな側面から検討し、なおかつそれを体系的に構築していくのは、非常に骨の折れる作業ですよね。

さらに社内教育プログラム案を作成したあとは、経営層にプログラム案についてのプレゼンを行って、了承をもらわないといけません。その際に「上がなかなかOKを出してくれず、いつも苦労している」という担当者の方も多いようです。

事実私も、そうした悩みを抱えている人事・教育担当者にお会いすることがよくあります。

実際にどんな教育プログラムを設計し、そしてどのようなプレゼンを行っているのか、拝見させてもらったことも何度かあります。

その正直な感想は、辛口で申し訳ないのですが、「確かにこの内容だと厳しいですね」というものでした。

自社にとって、本当に必要な研修は何かを考える

「社内教育プログラムの構築」や「プログラム案の経営層へのプレゼン」がうまくいかない理由として、私は以下の2つがあると考えています。

1)その研修が「会社の事業課題の解決にどうつながるか」が明確でない
2)中長期的な観点でその教育プログラムを見たときに、ROI(投資対効果)が大きいとは思えない

得てして人事教育担当者は、今流行りの研修を自社の教育プログラムの中に取り入れようとしがちです。

例えばラーニング・オーガニゼーションの考え方が流行した頃は、各社がこぞって、ラーニング・オーガニゼーションを実践するための研修を導入しました。

しかし本来は、社会的に流行っているかどうかではなく、

1)自社が抱えている経営課題は何か
2)その経営課題を解決するために、どんな組織開発・人材育成をする必要があるか
3)必要とされる人材を育成するために、どのような研修が必要か

といった観点で、教育プログラムは組み立てなくてはいけません。

また、今目の前にある課題を解決できる人材を育成するためだけではなく、5年先、10年先を見据えた人材育成のためのプログラムを考えることも重要です。

こうした視点で教育プログラムを構築しないと、

「この研修によって、うちのビジネスの何が解決できるわけ?」
「中長期的な人材育成を考えたときには、どうするの?」

などと経営層から指摘され、いつまで経ってもOKがもらえないことになるわけです。

「6BOX」活用のススメ

そこで私は、社内教育プログラムの構築に悩んでいる担当者の方には、「6BOX」のフレームワークを使って、問題を整理するようにアドバイスしています。

これは自社の「経営課題」「組織人材課題」「研修課題」を、「短期」と「中長期」の両面から考えるためのフレームワークです。

ある架空の情報通信関係の会社を例として、実際に埋めてみるとこんな感じになります。

1.短期-経営課題

・単体のデジタル機器売りから、IoTを中心とした総合的ソリューション・プロバイダーへの脱皮
・顧客とともに未来のビジネスを考え、創出するパートナーになる

2.短期-組織人材課題

・顧客の課題解決ができるコンサルティング力の強化
・部門の垣根を越えて率先してプロジェクトを提案、推進できる人材の育成

3.短期-研修課題

・ソリューション営業研修
・イニシアティブ(主導力)強化研修

4.長期-経営課題

・アジアを足がかりにしたグローバルなビジネス展開と、そのための新市場の開拓
・新技術を活用して新しいビジネスモデルを構築し、業界を先導する

5.長期-組織人材課題

・自ら現地に合ったビジネスを見つけ出し、販路を作り出していく「グローバル開拓人材」の育成
・ダイバーシティを受け入れ、かつそれをビジネス創出につなげられる組織力の醸成

6.長期-研修課題

・グローバル人材の選抜と育成研修
・早期幹部の長期的
・計画的育成

「6BOX」は、私自身もお客さまの課題を整理する際によく使っています。

ぜひみなさんも、自社の教育プログラムの再構築を行う際にご活用ください。