プレゼン研修の受講者から、「言葉がうまく出てこない。どうしたらいいでしょうか?」といった類の質問をよく受けます。より正確に言うと、「『こういうことを言いたい』というイメージはあるが、それを瞬時に適切な言葉で表現できない」という、いわゆる「言語化」の悩みです。

多くの人に共通する課題ではないでしょうか?

一足飛びに解決策に行く前に、「言語化」のメカニズムを解明してみましょう。「言語化が上手い」ということは、以下の2つを満たしていると言えます。

  1. 使えるレベルの語彙を十分に持っている
  2. 瞬時にふさわしい言葉を選び取ることができる

では、これらの能力を高めるために日々どんなことをすればいいのでしょうか?

大きく2つあります。それは語彙を増やすための「インプット」と、言語化の瞬発力を高めるための「アウトプット」です。

以下に、「インプット」と「アウトプット」それぞれに関して、具体的にどのようなことをすると効果的かをお伝えします。正直言って、やることは当たり前のように思うかもしれませんが、「やり方」を工夫するのが味噌です。

語彙を増やす為に効果的な「インプット方法」

まずは、「インプット」です。

一番は、本や雑誌を読むこと。そう言うと、「どんな本を読んだらいいのか?」と聞く人が多いのですが、私の答えはいたってシンプルです。「読みたい本を読みましょう」

というのも、苦しいお勉強は続かないから。「思わず読んでしまう」といった楽しくて、夢中になっている状態を作ることこそが、継続の鍵です。「このひとうまいなぁ」「こんな風に書けるといいな」と憧れる人の文章であれば、ネットのブログや雑誌、漫画でも全然かまいません。

ちなみに、私はスポーツ雑誌の『Number』が好きで、よく読んでは研究していました(今でも継続しています)。

その際のポイントは、3回読むこと。

まず1回目は、ひたすら 楽しく読みます。いわゆる通常の読み方です。

その上で、2回目は気に入ったパートを 味わって読みましょう。「この文章、うまいなぁ」「この言葉、ぜひどこかで使ってみたいな」といった感じで。

余力があれば3回目に進み、今度は分析的に読みます。その際、以下のことをやるのがおススメです。

  • 「上手いな」と思う秀逸な表現に印をつける
  • メモに書く
  • 「なぜうまいのか?」を考える

ちなみに私は、「秀逸な言葉集」という欄を作って、そこにメモしています。このメモをたまに眺めて思い出すことで、どんどん自分の血肉になっていきます。

インプットしたことは「アウトプット」を通じてトレーニング

もう一つの「アウトプット」に関して。なんだかんだ言って、日記を書くのが一番でしょう。

ただし、ここでもひと工夫加えます。文章を書く際に、よく使われる抽象的な言葉を使いすぎないことです。例えば、「すごい」「素晴らしい」「嬉しい」といったもの。

言わば、小学生が使いそうな言葉をできるだけ避けて、別の言葉を使うようにするとも言えます。コツは、「言葉の解像度」を上げること。「素晴らしい」のような、抽象的な「ビッグワード」が心に浮かんだら、「具体的にはどういうこと?」と自分に問うてみましょう。

例えば、

  • すごい ⇒ 常人離れしている、突き抜けている
  • 素晴らしい ⇒ 人の心を惹きつけて離さない
  • 嬉しい ⇒ 天にも昇る気持ち

と言った感じです。

その際に有用なのが、類語辞典です。ネットで検索するとすぐ出てくるので、ぜひ活用しましょう。

ただし、「日記は面倒」と思う人は、日々のメールやチャットでたまに意識して「解像度」を上げて書いてみるだけで、十分いいトレーニングになります。そうすると、相手に伝わりやすくなって仕事もよりスムーズに進むので、一石二鳥でしょう。

言語化力と合わせて強化したい能力とは

ちなみに、「言語化力の強化」とは別に、もう一つ強化して欲しいことがあります。それは、論理力を鍛えること。

言語化力を上げたい理由に立ち戻って考えてみましょう。究極は、相手にしっかり伝わることのはず。

そのために必要なのは、何と言ってもロジックです。論理が明確に伝われば、多少言い淀んだり、言葉選びを間違ったりしても、聞き手が頭の中で補ってくれるものです。

実際、話が論理的で分かりやすい人をよく観察してみましょう。そんな人であっても、時にはすぐに言葉が出ずに、詰まってしまうことがあります。だとしても、その時すでにどんな「言葉」を言おうとしているかが、聞き手としてある程度推測できているはずです。

つまり、論理の筋道が通っていると、少々うまく言語化できなくても、十分に相手に伝わるということなのです。

言語化力に加えて、論理力。

この2つを意識して鍛えていただければと思います。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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