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from 西野浩輝

本質的な質問をうけて

先日私は、鳥取、大阪、宮崎と続けて出張に行く機会がありました。

そのとき、ちょっと新鮮な体験をすることになりました。大阪での所用が終わった後、大阪に住んでいる高校3年の姪と、中学3年の甥に会ったんですね。もちろん会うこと自体は珍しくはないのですが、そこで交わした会話の内容がとても新鮮だったんです。

「会いたい」と言ってきてくれたのは、姪と甥の方でした。

二人はこれまでに、私が書いた何冊かのビジネス書を読んでくれていました。そういうこともあって私の仕事や生き方に興味をもち、話を聞きたいと思ったみたいなんです。私としては「こんなおっさんの話を本当に聞きたいんだろうか」と不思議だったのですが、せっかくですから会うことにしました。

その場で私は、姪と甥からさまざまな質問を受けることになりました。

普段、私は仕事柄、質問には慣れています。

セミナーが終わって、受講生から質問を受ける場面では「どんな質問でも来い」という気持ちになっています。頭のなかにあらかじめ答えが用意されている場合が多いこともあり、ほとんどの質問にはすぐに答えられます。

またいろんな観点から受講生の質問に答えるように心がけています。

ところが姪と甥の質問については、勝手が違いました。

何と言いますか、人生の本質に触れるような質問が多かったんですね。

たとえばこんな質問です。

どうして、この仕事をしているんですか?

「勉強することは、将来どう役に立つんですか。大人は、子供の頃に勉強したからこそ今があると言うけれど、どう大事なんですか」

「おじさんは、なぜ今の仕事をしているんですか」

このうち後者については、セミナーでもしばしば受講生から質問をされることがあります。

このときには
「長らくビジネス教育の分野に従事しているうちに、とかく実践的ではないとか効果がないと批判されがちなビジネス研修を、根本から変えたいと思ったから」とか、

「コミュニケーションスキルを身につけてもらって、組織のなかで元気に働くビジネスパーソンをもっと増やしたいと思ったから」

と答えるようにしています。

でもこの答え方って、ビジネスマンに対しては通用しても、中学生や高校生にこんなふうに話してもピンと来ないと思います。

姪と甥には、ビジネス界で生きていない人にもわかる言葉を使って話さなくてはいけません。

そのため私は、姪と甥の質問に答えるために、「そういえば自分は、なんでこの仕事を選んだのだろう」とあらためて原点を見つめ直すことになりました。

そして「ビジネスの世界で生きていない人に対して、どういう言葉を使えば、自分の思いがうまく通じるだろうか」ということを、考えさせられることになりました。

この新鮮さは、異業種交流会などで他業種の人と話すときの新鮮さとは、まったく種類が違うものでした。

なにしろビジネス用語を使わないで、話さなくてはいけないわけですから。

おなじ目線に降りてみると・・・

もう一つ新鮮だったことがあります。

二人は私の最新作『人が変われる』(KKベストセラーズ刊)が、すごく面白かったと言うんですね。

あの本は中堅のビジネスパーソンを読者対象としているのに、中高生から好評を博すなんて、かなりのおどろきでした。

二人は「おじさんの発想が面白い」と言ってくれました。そして「なんでこんなモノの見方ができるの?」と聞いてきたのです。

「なんで?」って聞かれても、普段意識していることではありません。

「自分はどんな立場からどのような観点で世の中を見て、モノを考えるようにしているんだろうか」ということを、質問されて初めて深く考えさせれられることになりました。

姪や甥のように、日ごろ接する機会が少ない世代の人ときちんと話すと、思いもよらぬ角度から質問をしてくるので、とても刺激的です。

親戚の子どもというと、大人の立場から接することになりがちですが、たまにはおなじ目線に降りて一緒に話してみると、新しい気づきを得ることがたくさんあります。

子どもだけではなくて、ビジネス界以外で生きている人たち、たとえば大学の研究者や農家の人、職人さんなどと話してみても、発見は多いと思います。

自分の閉じた世界を開いてみると、大きな学びにつながる可能性が高まる

ということですね。