「最近の若者は・・・」というセリフ。

続く言葉の多くは年長者が若者に対して嘆く内容ですが、その歴史は古く、日本では平安時代に同じようなことを言っていたと書物に残っています。言わば、「永遠のテーマ」とも言える課題に対して、現代のマネジャーやリーダーはどう取り組めばいいのでしょうか?

経験を交えて導き出した、私なりの見解を今日はお伝えしたいと思います。

若者研究はしたほうがいいの?

私がマネジメント研修やリーダーシップ研修をしていると、「最近の若者が理解できない」「ジェネレーションギャップを感じてやりにくい」と嘆く受講者が少なくありません。そして、こういった悩みを解決するために、「最近の若者」を一生懸命に研究する人がいます。

すばり申し上げましょう。

私はお勧めしません。

ただし、誤解なきようにお願いします。だからと言って、「相手を理解する努力はしなくていい。自分の尺度だけで指導、マネジメントをすればいい」と言っているのでは、全くありません。

ではどういう理由でお勧めしないのか?

それは、「最近の若者」の研究をすることは「若者たち」といったレッテルを貼ることにほかならず、そのことによって新たな問題を生じさせることになるからです。ちなみに、この「レッテル化の弊害」は、「若者」だけでなく、「女性」「外国人」等にも当てはまると思います。

このことを痛感されられたエピソードをお話しさせてください。

多様性に富む環境での気づき

マーキュリッチを立ち上げる前に、私はある外資系の企業に勤めていました。

当時、その会社は日本に進出して間もないということもあり、非常に国籍がバラエティに富んでいました。約15名の社員が何と「7か国の人達」で構成されている程だったのです。

まさに「ダイバーシティ」の最先端を行っている状態と言えました。

そんななか、メンバーをよく観察してみると、周囲とうまくやっている人と苦労している人の違いが非常に大きかったのです。「その差は何なのか?」をいろんな観点で考えてみたところ、1つの大きな答えに辿り着きました。

それは、英語力などではありませんでした。

「レッテルを貼っているか、いないか?」だったのです。

うまくできていない人は、会話の端々で「Foreigner(外国人)は・・・」と言ったレッテルを貼った発言が多く、それが故に苦手意識を持っていた。そして、レッテルを貼れば貼るほど「私とは違う人達」という意識が強くなり、ますます苦手意識を抱くという悪循環に陥っていました。

それに比べて、うまくできている人は、国籍とか全く気にせずに、1人1人のタイプや個性、価値観に合わせて働きかけ方を変えていたのです。

つまり、「人を『群』として見るのでなく、『個』として見る」

それが、多様性豊かな環境においてうまくいく本質だと悟ることができた気がしました。

私自身、超「内資系」企業から超「外資系」企業に転職して苦労していたのですが、この発見のおかげで、周囲とのコミュニケーションが随分取りやすくなったことを今でも鮮明に覚えています。

レッテルを貼らず、個を理解しようとする

あれから20年以上経ち、これまでたくさんのメンバーをマネジメントしてきました。振り返れば、様々な個性を持ったメンバーがいましたし、自分の理解を超えるほど独特の価値観を持った人もいました。

それでも私は「ジェネレーション」「性別」「国籍」のギャップで悩んだことはありません(もちろん、個々人へのマネジメントではたくさんの苦労をしてきましたが・・<苦笑>)。

それは、上記の「外資系に勤めていた時の気づき」が間違いなく生きており、それを気づかせてくれた人たちに感謝しています。

現代の多くの企業を見てみると、ほとんどの会社が「ダイバーシティ」を推進しています。今や、国籍のみならず、働き方、属性、価値観の多様性が大きく広がっています。

んな時代だからこそ、私がマネジメント研修をする際には、「レッテルを貼らず、個を理解する」考え方を強調しています。

そういう意味で、まさにレッテルの典型例である「最近の若者」という言葉を使わない、つまり若者研究をしないことをお勧めしているのです。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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