from 西野浩輝

春は入社式、部署異動や転勤など、別れと出会いのイベントが多く、それに伴って人前でスピーチやプレゼンをする機会も増えてきます。

もうすでにプレゼンの予定がある方もいらっしゃるかもしれませんね。

せっかくの場なので、少しでも心に残る話をしたい。そのようにお考えの方に、ぜひおススメしたいのが「比喩」を取り入れること。

ちょっとした比喩ひとつで、聞き手への伝わり度合が大きく向上します。今日は、その「比喩」について例を挙げながら、少し深く語りたいと思います。

比喩とはどういったものなのか?

聞き手の心を動かすプレゼンをしたい!」という方は、ぜひ比喩を使いこなせるようになることをお勧めします。

そもそも比喩とはどういうものなのでしょうか?改めて定義づけをしてみましょう。

自分の言いたい論点を、少し離れた事象を使って説明しなおすこと

例えば、「人生」を「航海」に喩える。

トークにするとこんな感じになります。

「人生も航海と同じように、荒波のときもあれば、平穏のときもあるでしょう。ときには目指すべき指針を見失って漂流してしまうこともあるかもしれません。そんなときこそ。。。」

どうでしょう? 学校の校長先生とかが使いそうですよね?

では比喩は、どんな場面で使うと有効なのでしょうか?

どんな場面で比喩を使うと有効なのか?

以下の3つの場面で使うのがおススメです。

  1. 当たり前のことを言うとき
  2. 複雑なことを説明するとき
  3. 抽象的なことを説明するとき

ではそれぞれ、例を挙げて説明しましょう。

1.「当たり前のことを言うとき」

「ビジョン・志があれば、障害は乗り越えられる」。正直、聞き飽きたくらいの当たり前の主張ですよね?

これを比喩で表現すると、急に味わい深いものに早変わりします。

例えば、比喩使いの名人の1人、孫正義さんの言葉です。

「近くを見るから船酔いする。100キロ先を見てれば景色は絶対にぶれない。ビジョンがあれば、少々の嵐にもへこたれないものだ」

どうでしょう?少し心に響く表現になったのではないでしょうか?

あと、僭越ながら私自身の例を紹介させてください。

「苦しいときに頑張る人が、成功する」。正直言って退屈な主張です。

そこで私はよく「ヨット」に喩えて話します。

「ヨットは、逆風に向かって45度の角度をつけて前に進めます。そして、逆風が強ければ強いほど前に進む力が強くなるのです。さらに大事なのは、そのときこそライバルと差が付きやすい局面なのです。人生で逆風を感じたら、逃げずに正面から向き合いましょう。あなたは着実に前に進んでいます。」

いかがでしたでしょうか?

2.「複雑なことを説明するとき」

コンピュータシステムについての専門家が、素人相手にプレゼンテーションする場面をイメージしてください。

仮に「このシステムにおいてバグ・エラーを見つけるのがどれだけ大変か?」を滔々と説明したとしましょう。多くの素人の方はどんなに丁寧に説明されても、おそらくピンとこないでしょう。

そんなときに、

「言わば、大海原でコイン探しをするようなものなんですね」

と比喩で表現すると、その難しさが少しイメージできるのではないでしょうか?

3.抽象的なことを説明するとき

まさにさきほど紹介した校長先生の例です。

人生という「抽象的なもの」を、航海という「具体的にイメージしやすいもの」で言い換えることで、グッと伝わりやすくしているのです。

比喩の効用とは?

では、比喩にはどんな効用があるのでしょうか?

第1に、聞き手にイメージを伝えやすくなります。

特に複雑で抽象的なものを説明するときに、端的に分かりやすく表現できるのが良い点です。

2つめが、聞き手の感情を動かせること。

多くの比喩は、絵としてイメージできるものが多い。まさに「ヨット」や「コイン探し」はそれにあたると思います。

情景がイメージできると、人はあたかもその場にいるような感覚になり、感情移入するようになるのです。

最後が本質を掴んだプレゼンになることです。

自分が言わんとすることのセンターピンを掴まないと、比喩に発展はできません。

つまりは、本質ポイントを掴み、それを伝えることで、プレゼンテーションの納得性が高まるのです。

プレゼンテーションに際して、比喩を短時間で見つけるのは至難の業です。だからこそ、少しずつ比喩をストックしていくことをお勧めします。その上で、日常から喩える癖をつけるといいでしょう。

いざ本番のプレゼンテーションで効果的な比喩が思い浮かぶはず。

比喩をうまく活用して、「聞き手の心をわし掴むプレゼンテーション」に仕立ててください。

西野浩輝写真マーキュリッチ代表取締役
西野浩輝
「人は変われる!」をモットーに年間150日の企業研修をおこなう教育のプロフェッショナル。トップセールス・経営者・外資系勤務など、これまでの自身の経験を活かして、グローバルに活躍できるプレゼンター人材の輩出に取り組んでいる。
西野著書写真

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