アバナード株式会社は、Microsoft社の製品に特化したソリューションの提案や、システムの設計・開発・導入・保守などを手がけているグローバルITソリューションカンパニーです。

今回同社では、プレゼンをする機会の多いマネージャークラスのエンジニアを対象に、「Presentation Skills Clinic」という名称の研修を実施されました。

その研修講師を務めた西野浩輝が、研修を受講されたマネージャーの髙橋直樹様に研修で得た気づきや学びについて、そして同社HRディレクターのキム・スンジャ様に今回の研修の狙いについて、インタビューを行いました。前半では、髙橋様へのインタビューの様子をご報告します。

あんなに緊張感のある2日間を過ごしたのは久し振りだった

西野 今回髙橋さんが、「Presentation Skills Clinic」を受講しようと思われた理由は何でしょうか。

髙橋様 私にはプレゼンテーションのスキルが必要となる場面が、大きく三つあります。一つはお客様のところに伺って、ITの導入や活用に関するテクニカルコンサルティングを行う場面。もう一つは社内の開発部門の人材を養成するトレーナーとして、ティーチングやコーチングをしなくてはいけない場面。そして三つ目は、これは完全にプライベートでの活動なのですが、エンジニアのコミュニティを運営しており、そこで毎月勉強会を開催しています。勉強会では私が講師として登壇する機会も多く、やはりプレゼンのスキルが求められます。

ところが私はこれまでプレゼンスキルを体系的に学んだことがなく、ずっと我流でやってきました。「本当に自分のやり方がベストなんだろうか?」という疑問があったため、良い機会だと思い受講することにしました。

西野 実際に受講してみてどうでしたか?

髙橋様 あまりにも内容が濃すぎて、吐きそうな2日間でした(笑)。変な話なのですが、先日400人ぐらいの聴衆を前にプレゼンをする機会があったときには、まったく緊張しなかったんですね。

ところが「Presentation Skills Clinic」では、受講者はわずか7、8名なのに、みんなが私のプレゼンに目を光らせ、鋭いフィードバックを返してくるので、緊張感が半端なものではありませんでした。

しかもプレゼンが終わってもほっとする間もなく、指摘されたことを頭の中で理解・整理したうえで、また次のプレゼンに臨まなくてはいけません。あんなに緊張感のある2日間を過ごしたのは久し振りでした。

「コミュニケーションのすべてがプレゼン」という意識が身についた

西野 得るものの多い研修になったでしょうか。

髙橋様 はい、もちろんです。研修中に一番印象に残ったのは、「コミュニケーションのすべての場面がプレゼンである」という西野さんの言葉です。プレゼンというと、大多数の聴衆の前で話すものだけをイメージしがちですが、そうではないんですよね。

研修を受けてからの私は、例えば社内のミーティングで発言するときでも、比喩や具体例を交えたり、身ぶり手ぶりを使ったりしながら相手に伝わるように話すというように、「コミュニケーションのすべてがプレゼンであり、すべてがプレゼンスキルを鍛える場面になる」という意識で臨むようになりました。

またフィードバックの大切さも学びました。あの研修では、ほかの受講者のプレゼンを聴いて、そのプレゼンの良い点と改善点をみんなでフィードバックするという場面が数多く設けられていましたよね。その際に西野さんは、他者のプレゼンを見るときや、フィードバックするにあたっての観点を私たちに教えてくださいました。

それからというものの、他者のプレゼンを見るときの見方がまったく変わりました。以前は漠然と「おもしろいプレゼンだな」と感じていただけのものが、なぜおもしろいのかを観点を持って分析できるようになった。そしてその分析結果を、自分自身のプレゼンの改善に活かせるようになりました。おかげで以前と比べると、私自身のプレゼンもかなり洗練されてきたと思います。

ただ、一方で新たな悩みごとも出てきてしまいました。研修では「聴き手がどんな人たちで、何に興味を抱いているかについて、聴衆分析をしたうえでプレゼンに臨むことの大切さ」についても学びましたが、時々聴き手のことを考えれば考えるほどわからなくなるときがあります。聴き手のことなんて考えず、自分が伝えたいことを伝えたいという思いが強かったころは、こんな悩みを抱くことはなかったんですけどね。

「指摘」と「示唆」のバランスを考えたフィードバック

西野 それは髙橋さんが、プレゼンのより深いレベルにまで辿り着いたからこそ、出てきた悩みと言えますね。髙橋さんが今回の研修で、さまざまな気づきを得てくださったようで、私としてもうれしい限りです。

私が研修中に意識していたのは、指摘と示唆のバランスでした。私は「受講者一人ひとりのどの部分をうまく引き出してあげれば、その人が大きく伸びるか」ということをいつも考えながらフィードバックやアドバイスをしています。

その際に、その方の良い点と改善点をこちらが全部指摘してしまうと、言われたほうは「ああ、そうですね」で終わってしまいますよね。だからあるところまでは指摘するけれども、そこから先は示唆に留めて、できる限りご本人の中で気づいていただきたいと思っているんです。

髙橋様 確かに人から教えてもらったことはすぐに忘れてしまうものですが、自分で気づいたことはなかなか忘れませんからね。相手自身に気づかせるように、示唆だけを与えるというのは、とても良いと思います。

私は西野さんに対しては、受講者一人ひとりの個性を活かした指導を心がけておられるなと感じました。受講者は誰もが私のようにお喋りな人間ばかりではありません。流暢な話し方はできないんだけれども、表情が豊かな受講者に対しては、西野さんは「その笑顔を活かして、もっとこんなふうなプレゼンにすればいいのでは?」といったアドバイスされていましたよね。

もちろんプレゼンを行ううえで、誰もが共通に身につけなくてはいけないスキルはあると思いますが、西野さんは一人ひとりの個性も大事にされているなと思いました。

西野 私は、それはパソコンに喩えると、OSとアプリのようなものではいかと思っています。OSとしてのプレゼンスキルはきちんと決まった型があり、誰もが身につけなくてはいけません。けれどもアプリは、自分らしさを発揮できるものをインストールして、それをどんどん磨いていけばいい。研修ではOSとしてスキルを着実に定着させることと、アプリの部分を伸ばしてもらうことの両方を重視しています。

自分のプレゼンスタイルの道を示してくれた研修だった

西野 髙橋さんは2日間の「Presentation Skills Clinic」を受けたあとに、上級編の「Advanced Course」も受講してくださいました。こちらはなぜ受けようと思われたのですか。

髙橋様 確か「Advanced Course」が開講されたのは、「Presentation Skills Clinic」の半年ぐらい後でしたよね。半年前に学んだことを、きちんと自分は習得できているかどうかを確認するために受講することにしました。

「Advanced Course」では、私のプレゼンに対して、西野さんが一歩踏み込んで指導をしてくださいました。プレゼンの途中で西野さんからストップが入り、「今の部分はこうしたほうがいいのではないか」といったアドバイスをもらったうえで、もう一度最初からプレゼンをやり直してみたり、私のほうも疑問点が出てきたらその都度西野さんに質問したり……。「Advanced Course」だからこそ可能な、柔軟できめ細かい指導を受けることができました。

西野 髙橋さんは、プレゼンのオープニングに凝るタイプです(笑)。オープニングについては、どういう意図があってなぜその導入から入ったのか、髙橋さんにはかなり突っ込んだ質問をしましたよね。そして返ってきた答えに対して、「私だったらこういうオープニングにする。なぜなら、そうすることで聴衆の興味関心をこんなふうに喚起することができるから」というように、具体的かつ実践的なアドバイスをしていきました。髙橋さんとは、非常に高いレベルでの個人レッスンができたと思います。

髙橋様 西野さんの「私ならこうする」というアドバイスは、「では自分ならどうしようか」と考えるうえでのヒントになりました。「Advanced Course」では、自分のプレゼンスタイルを確立していくうえでの道を西野さんが示唆してくれたというのが、一番大きかったですね。

西野 マーキュリッチの研修は、どんな課題を持っている方が受けると良いと思いますか。どういう方にオススメの研修でしょうか。

髙橋様 世の中でビジネスをしているすべての方に受けてほしい研修だと思います。どんな仕事でも同僚やお客様とのコミュニケーションが必要になりますし、コミュニケーションをしていくうえで、プレゼン力は不可欠です。プレゼン力があるかないか、相手に理解や納得をしてもらえるかで、相手を動かせるかどうかは大きく変わってきますからね。ですから世の中でビジネスをしている皆さんにオススメの研修です。

西野 本日はありがとうございました。

※同社のHRディレクター、キム・スンジャ様へのインタビュー記事はこちらから

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※取材日時 2019年7月
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