日本マイクロソフト

WindowsやMcrosoft Officeで有名な日本マイクロソフト株式会社は、企業向け・消費者向けを問わずITソリューションを広く届けている、業界のリーディングカンパニーだ。同社は、自社の看板タレントとなる役員およびエバンジェリスト(イベントやセミナーなどで同社製品・テクノロジー・サービスをお客様へ伝える)の伝える力を高めるために、マーキュリッチにプレゼンテーション・トレーニングを依頼。その結果、大きな手応えを得た。

プレゼンテーション・トレーニング導入を総括した齊藤 賢一様(セントラルマーケティング本部マーケティング コミュニケーションズ マネージャー)と、研修を受講した業務執行役員の反町 浩一郎様(コーポレート営業統括本部 統括本部長)、エバンジェリストの延原 黄司様、研修をオブザーブした営業本部長の澤 円様(クラウド・プラットフォーム営業本部 本部長)に、マーキュリッチの研修について詳しく聞いた。

※役職は研修実施当時のものです

マイクロソフトがプレゼン能力強化を必要とした理由

― まずは、齊藤様の当時のお仕事について教えてください。

saito_01_1当時は、コーポレートブランディングチームという所で、イベントの統括マネージメントをしていました。たとえば、当社主催で1500人を越える大規模イベントをおこなう場合などに、どのようなお客様をお呼びし、どのようなメッセージをお伝えし、お客様にどのようなアクションに起こしていただくかを計画する。また、どういう基調講演をおこなうのか、どのようなセッションをおこなうのかなどを具体化してコンテンツ制作し、実行に移すという仕事です。

特に、お客様にアクションを起こしていただくことが重要で、たとえば製品を手に取っていただいたり、他の人に口コミをしていただいたり、問い合わせをしていただいたり、何らかの反応があってはじめてイベントは成功です。それを起こすまでの全体マネージメントが私の仕事ですね。それ以外にも、社内の調整、協力会社様との調整など多岐にわたります。

― イベント総括を担当される齊藤様の部門で、プレゼンのトレーニングを依頼されたのはどういった理由でしょうか?

先ほど「アクションを起こしてもらうことが重要」とお話しいたしましたが、お客様のアクションを導くには基調講演やプレゼンテーションで我々の製品、テクノロジー、サービスを明確にお伝えすることが重要だからです。講演・プレゼンの善し悪しでお客様の満足度の大半が決まってしまいます。そのため、スピーカーのタレント力・伝える力などの底上げが必要だと考えました。

― 伝える力の底上げですか。

はい。ただ、底上げと言っても「初心者の人間を中堅どころへ」といったイメージではありません。むしろ「トップクラスのタレントをつくる」ことが狙いです。

実は当社の講演をするような人材はみな、それなりのトレーニングや経験を積み聴講者の方へきちんとお伝えできるレベルでではあるのです。しかし、そこで満足したのでは、世界一流の競合他社との闘いに勝ち抜いていくことはできません。

なにしろ、競合にも超一流のプレゼンターたちがいらして、同じようにステージに立つわけです。当社にも多くのプレゼンテーターがいるのですが、彼らのような人材が3人いるのか、10人いるのか、20人いるのかが、企業の実力だと思うのです。

表現を変えれば、彼らのような「あぁ、あの人ね。あの人のセミナーなら行ってみよう。話をきいてみよう」と思っていただけるような、タレント性であったりプレゼン能力が高い人材(タレント)を多く作ることが必要だと考えました。

トップクラスのタレント育成のためのトレーニング内容

― 「トップクラスのタレントを多く育成するための研修」ということですが、何か気を付けたことはありますか?

受講者の選別についてです。研修の目的から考えて、今回のターゲティングは「中堅クラスをひとつ上のランクに伸ばす」ことに決まりました。中堅クラスというのは、当社のなかで「お客様の満足度が、大体安定しているプレゼンター」ですが、彼らを「安定してお客様から高評価をいただける=お客様へきちんと伝えて頂ける」に伸ばそうと。

各部署には「これからスーパーマンにしていきたい人間を選んでほしい」と伝えたくらいです。

― それで、実際にはどんな形で研修をされたのですか?

今回は、マーキュリッチさんからのご提案で、通常行っているプレゼン研修を、次のように弊社用にカスタマイズしてもらいました。

概要

◆受講者を3名で1クラスの少人数制とする
◆講義は事前にDVDで見ておき、トレーニングの時間は徹底的に「プレゼン演習&フィードバック(講師からのアドバイス)」の繰り返しで、スキル強化に充てる
◆プレゼン直後の講師からのフィードバックに加え、プレゼンのビデオ撮影&ビデオを見ながらのフィードバックで、客観的視点&自らの視点で自分のプレゼンを振り返る
◆ 社内トップクラスのプレゼンターに、研修のオブザーバーとして参加してもらう(オブザーバーに、講師の指導方法・フィードバックの方法を見て学んでもらうことが目的)

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(※)エバンジェリスト・・・マイクロソフトの製品やテクノロジーについてより深く理解してもらうために、顧客企業やパートナー企業のITエンジニアへの啓蒙活動をおこなう役職。主に、大規模~小中規模など様々なイベントでのプレゼンターを担当する

数字の変化で現れる研修効果について

― 研修の効果について、数字で見える変化はありましたか?

はい。研修を受講したエバンジェリストのうち、5人がイベントでプレゼンを行いました。その5人のうち3人が、昨年に比べてお客様満足度の数値を目に見えてアップさせました。

ただ、実はこのあたりの評価は単純ではないのです。イベントの規模や、当日の聴衆の関心の幅、プレゼンのテーマなどの影響も受けるためです。そのため、単純に「前より満足度の数値が上がったから効果があった。前と変わらなかったから、効果がなかった」とは捉えていません。そういう短期決戦ではないということです。

もっと先の先を見て、“自分たちの持っている気持ち”とか、“自分のプレゼンへの自信”が育まれたかがチェックポイントだと思っています。そして、その部分は受講者全員が格段に上がっていると感じています。

― 格段に上がっているといいますと?

受講者の声から、自信や気持ちの高まりが見て取れたということです。
というのは、トレーニングが終わった2カ月後くらいに、役員も含めて、エバンジェリストとオブザーバーにアンケートを取ったのです。8割ほどの回答率だったのですが、返ってきた返事は、100%すべて「満足している」という結果でした。 では、何に満足しているのかというと、以下のような意見です。

◆自分を客観的に見ることができた
◆自分の表情・身振りなどを改善できた
◆ストーリーの作り方がわかった
◆「プレゼン&ビデオ撮影&フィードバック」の繰り返しがツラかったけど、良かった。

― では、受講者のみなさん、満足されている?

それはもう間違いないです。

受講者のプレゼンの具体的な変化の内容

― 齊藤様から見て、それぞれの受講者の方の、個別の伸びではいかがでしょうか?

総じて良くなっています。

― 今日、同席されているエバンジェリストの延原様に関してはいかがですか?

延原の場合、まさに「自分の売りが理解できた」ということだと思います。
以前は型通りのプレゼンをイメージして、「丁寧な・標準的な」プレゼンをしようとしていました。また、関西弁を無理に標準語にし、なんとかキチンと話そうと努力した。それがむしろ「自分を抑えた・没個性の」プレゼンになってしまっているように思えました。

それが、野村講師の指導で「ムリせず、普段どおりの関西弁で、のびのびと」プレゼンするようになってからは、むしろ聴きやすく、またキャラクターの魅力が立ったプレゼンになりました。イベントやセミナー終了後にも名指しで質問が入るようになったのですが、これは言い換えれば、参加者からのアクションが引き出せているわけです。このような変化は、彼が自分自身のタレント性・魅力が一番引き立つスタイルを見つけたということだと理解しています。

― ありがとうございます

業務執行役員 反町 浩一郎 様のご感想

sorimachi_01日本マイクロソフトの業務執行役員として、コーポレート営業統括本部統括本部長として組織を牽引する反町浩一郎様。
大手中堅企業との商談での重要な場面で、CIO・情報システム部門長へのトッププレゼンテーションをおこなう反町様が、本プレゼンテーション研修において、どのような課題を自ら設定し、どのように克服したのかを伺いました。

― それではここで、エグゼクティブのトレーニングを受講された反町 浩一郎様にお話を伺います。お仕事のご担当領域について教えてください。

sorimashi02_1コーポレート営業統括本部の統括本部長として、大手中堅企業3,200社の事業を担当しています。営業部門のトップという立場上、プレゼンの機会も少なからずあります。クライアントとの商談でのプレゼンテーション、大きいイベントでのプレゼンテーションなど大中含めて、プレゼンは月に3~4回、10名~50名のお客様の前で行っています。

― 研修の受講前には、プレゼンテーションに関してどんな課題を感じておられましたか?

受講前に、自分で認識していた課題は3つです。

1つ目は、プレゼンが説明的・営業的になっていたということです。
私に求められるプレゼンの出番は、スペックなどの細かい説明ではなく、ビジネスの大枠を示すなど、いわゆるエグゼキュティブ・プレゼンのような場です。しかし、十分にそうなっていませんでした。

2つ目は、話の仕方やストーリー構成に、状況に応じた変化がつけられていなかったことです。
10名前後のお客様の前で行う商談と50名以上のお客様の前で行うオフィシャルなプレゼンテーションとで、話の仕方や構成が変えられていませんでした。そのあたりの捉え方がわかっていなかったのです。

3つ目は、ライブ感に欠けていたことです。
受講前は、完璧な状態を目指し、プレゼンの内容を丸暗記するほど練習をしていました。入念な準備自体はよいのですが、覚えたとおりに話すことに意識が向いてしまい、固く・抑揚なども乏しいプレゼンになっていました。西野先生に「スピードやリズムで変化をつけないと、聞いている人は飽きてしまう」というご指摘をいただいたことを覚えています。

― 研修中はこの3つを意識して取り組まれたと思いますが、研修後のご自身の変化はいかがでしたでしょうか?

まず周りから「プレゼンがとても良くなった」と言われます。

あと、プレゼンの準備にかかる時間が減りました。

以前はトークスクリプトまで完全に落とし込んで、それを丸暗記してプレゼンをしていたのですが、受講後は前よりも柔軟性を残すようになり、細部の文言などは当日のライブ感のなかで補うようになりました。

準備の時間は減りましたが、プレゼンの品質はむしろ上がっていて、ライブ感が強く打ち出せるようになったと感じています。「覚えたとおりに話さなくては」という呪縛がなくなり、気持ちが楽になりました。おかげで、プレゼン中にお客様の反応に注目したり、自分の表情などに気を配る余裕ができました。

あと、受講後は人のプレゼンをしっかり見るようになりました。
というのも「プレゼン力を高めるのは、分析する力。人のプレゼンを見て、そこから気付くのが大切ですよ」と西野先生に言われたからです。

― 大きな変化ですね。

sorimachi_03_1ただ、築いたスキルも意識をしていないと、元に戻ってしまうと思います。だから私の場合、西野先生の講義内容をまとめた資料を作成し、時々読み返すようにしているんです。これを、イチローのように、身体に刷り込まれるまで繰り返そうと思います。

― 研修の中で、特に印象に残っているセッションはありますか?

プレゼンをビデオ撮影して、それを見ながらのフィードバックをもらうセッションです。

ビデオ撮影された自分のプレゼンを見て「このような話し方をしていたのか!」と、ショックを受けました。客観的フィードバックと、自分自身で見る経験の両方があるのが、貴重な機会でした。

ビデオだけでなく、講義・フィードバックなど含めて、総じてよかったです。

― 反町様の研修を担当したのは西野講師でした。西野への評価をお聞かせください。

sorimachi_04_1西野先生は、一言でいうとプロフェッショナルです。

私や他の受講生がプレゼンについて質問すると、それに適した答えが、パッとすぐに出てくるからです。それだけでなく、人の心理についても詳しく、引き出しが多いですね。すごい方だと思いました。

― マーキュリッチの研修が向いている人は、どのような人だと思いますか?

自発性のある人ではないでしょうか。たとえば、外資系企業の社員などは向いていると思います。

自分のプレゼンに対して「こういうところを伸ばしたい」「こういうところで煮詰まっている」といった具体的な課題を自ら設定できる人が向いてるでしょう。そうでないと、講師の持っている引き出しの多さを、活かしきれないのではないかと思います。

あとは、プレゼンの基礎の部分、背骨の部分を強化したい人ですね。

― 反町様、お忙しい中、貴重なご意見をいただき、ありがとうございます。

プロダクト マネージャー 延原 黄司様のご感想

担当製品のマーケティング活動から売上にいたるまで、製品に対しすべての責任を負うプロダクト マネージャー。その業務内容は、マーケティング施策の立案実施、大規模なセミナーでのスピーカーだけでなく、個々のお客様に訪問しプレゼンするなど、多岐に亘ります。

SharePointの担当であるエグゼクティブ プロダクト マネージャーである延原黄司様に研修の感想を伺いました。

― 続いて、受講をされた延原様にご登場いただき、お話を伺います。まずは、延原様のお仕事の内容について、教えてください。

Officeビジネス本部で、プロダクト マネージャーを担当しています。SharePoint(シェアポイント)という当社のグループウェアのマーケティング担当者です。それらの製品についてセミナーをおこなったり、様々なマーケティング施策を展開する仕事ですね。

― プレゼンテーションのシチュエーションとしては、どういうシーンがありますか?

主に、外部向けの製品紹介セミナーでプレゼンテーションを行います。 聴衆の規模は様々で、少ないと8名くらいで、多いと2000名くらいです。平均すると100名様くらいでしょうか。頻度は月に2回程度です。

― 研修を受講する前と、受講したあとの違いについて教えてください。

2つあります。「立ち居振る舞い」と「プレゼンのシナリオ構成」についてです。

立ち居振る舞い

受講前はプレゼンの際に「キチンと、正しく話そう」と思うあまり、文章を読んでいるような堅いプレゼンになりがちでした。しかし研修が進む中で、自然体で自分らしい話し方ができるようになりました。

これは、講師の野村先生から「延原さんはプレゼンする内容も熟知しているのだから、もっと普通に話をしてみては? 普段通り、関西弁で楽に話したほうが、延原さんらしいキャラクターも出ると思いますよ」と言われたことがキッカケです。私にとって、これは大きかったですね。

プレゼンのシナリオ構成

受講前は、シナリオを考えながら、それと同時にスライド作成をおこなうのが常でした。そうすると、いつの間にか話が冗長になったり、メッセージの軸がブレてしまうことがありました。ですが研修でサンドイッチ・フォーマットというプレゼンの構成フォーマットを学び、そのとおりにシナリオを組み立てるようにしてからは、そうした課題が解消されました。

― 学んだフォーマットは、アレンジの必要なく、そのまま使えているのですか?

はい。そのままの構成です。

私の場合、サンドイッチ・フォーマットに加えて、同じく研修で学んだ聴衆分析など、「プレゼンのシナリオ作成前に考えること一覧」を自分用ワークシートにしてまとめました。プレゼン資料作成のたびに、そのワークシートを自分で埋めて、情報を整理することにしています。

こちらがそのワークシートです。
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これがすごく良くて、スピーカー全員が、シナリオを作成するための事前フォーマットにするべきと思うくらい、いいです。シナリオ作りに費やす時間が縮まりました。

(※)サンドイッチフォーマット・・・聞き手に伝わりやすいプレゼンテーションのひとつの型。
サンドイッチフォーマットの詳細はこちら⇒「プレゼンの基本構成3つのステップ」

― 今回の研修で、特によかった点は何ですか?

行動につながる研修だったことです。

私がこのワークシートをつくったこと自体が、研修の良い点の表れで、今回の研修は現場で使えるものだったからこそ、ワークシート作成というアクションにつながりました。

他にもセミナーを受ける機会はありますが、学術的なセミナーなど、受けた後に何も行動につながらないセミナーもあるわけですから。概念的だと、何をどう行動に移していいかわかりません。

― 研修を受けた後、イベント参加者様の反応に変化はありましたか?

感触として、あったと感じています。

ひとつの例ですが、以前に少人数でハンズオンを交えたプレゼンをしたとき、質問が数多く出たり、お客様同士でのディスカッションが活発化したりと、とても盛り上がりました。

私が以前よりも自然体で余裕を持ってプレゼンができていることと、お客様との掛け合いのようなことを盛り込むようになったので、空気が和らいでいるからだと思います。

― 延原様の講師の野村への評価をお聞かせください。

nobuhara_03_1野村先生について印象に残っているのは、私が、ある製品のプレゼンをした後に、「私ならこうします」と、私のスライドを用いてプレゼンをしたときのことです。

野村先生はプレゼンテーションのプロであっても、当社製品のプロではありません。それほど詳しくない製品のプレゼンなのに、ロジックが通っていて、納得できて、魅力的に聞こえました。

「ほとんど知らない商品で、ようそれだけうまい事しゃべるな・・・」と思わされました。あれはすごかったです。

― その他はいかがでしょうか?

私に対してそうだったように、他の受講者に対しても、的確なフィードバックがありました。それぞれの受講者には各自個別の課題があるわけですが、その課題をピンポイントで指摘して、対策をアドバイスしてくれたのは良かったと思います。

あとは、人柄ですね。講師に好感が持てず「コイツ、なんやねん」と感じてしまうと、良い話でも頭に入ってこないことがあると思います。野村先生の場合、そうしたブロックが無かったので、素直にアドバイスが入ってきました。

― 延原様、お忙しい中、ありがとうございます。

オブザーバー 澤 円様のご感想

sawa_01_1日本マイクロソフトのクラウド・プラットフォーム営業本部のトップであり、マイクロソフトを代表するプレゼンターのひとりでもある澤 円様。

2006年には、日本人で唯一、世界でも十数人しか受賞していない「Chairman’s Award」を受賞されています。澤様には当研修でオブザーバーの立場からエバンジェリストのトレーニングをご覧いただきました。

― 本日は、オブザーバーとして参加された澤様にもお越しいただいていますので、その視点から、受講者様の変化についてご意見を伺います。
まずは、澤様の当時のお仕事について教えてください。

当時は、当社が持つソフトウェア資産の多くを集結させた「Windows Azure(ウィンドウズアジュール)」という、クラウドのプラットフォームサービスの営業本部長をしていました。

具体的には、既に競合製品をお使いになっているお客様に対して、当社の製品の魅力や価値をお伝えすることで、当社の製品をお使いいただくような戦略立案をし、クライアント企業のトップ層に対してプレゼン・商談をおこない、最終的に成約につなげていくという仕事です。

プレゼンは、大きな会場で多くのお客様の前ですることもありますが、1社様に対して行われる大事な商談が多いですね。

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― 今回、澤様は社内のトッププレゼンターの一人として、研修のオブザーバーをご担当されました。そんな澤様から見て、受講者様の研修後の変化について教えてください。

僕は延原を含む3名のエバンジェリストのトレーニングをオブザーブしたのですが、みんな短時間のうちに、かなり上達していました。その上達は見ている僕らにもわかるし、やっている本人たちにもわかるものでした。だから、自信にもつながったでしょうね。

例えば動作とか表情でいうと、プレゼン中の笑顔が、格段に多くなりましたね。堂々と話して見えるようになりました。逆に今までは、見せ方を心得ていなかった部分があったのでしょうね。上達していくプロセスを見ていて「人から見られる自分を意識してプレゼンするようになったのだな」と感じました。

― 特に今回の研修でよかった点を教えてください。

img_presenプレゼンテーションしてはフィードバックを受け、自分のプレゼンのビデオを見てはフィードバックを受け、ということをスパイラル型に繰り返しおこなったことが、受講者にとってよかったと思います。

このような方法をとることで、受講者はフィードバックで指摘された改善ポイントを意識して次のプレゼンに臨むわけですね。そして改善されたことは、ビデオで自分の目で確認できます。その繰り返しのなかで、短い時間で小さな成功体験をたくさん積み重ねられているように感じました。

ビデオ撮影をする研修は他にもありますが、ここまで何度も繰り返す研修はあまり見ないですから、受講者にとって、とても貴重な機会になっただと思います。

― それでは、今回の講師を担当した野村への評価をお聞かせください。

それはもう、プロですね。僕はずっとプロとして見ていますから。

野村さんの研修の様子を見ていて、一番のポイントだと思ったところは、フィードバックの時に、単純化された図式を使って説明されていたことです。これは、とても効果的だと思いました。

カルロス・ゴーン氏が“単純化のプロ”と称されることがありますが、それくらい単純化ということは大切だと思うのです。というのも、伝える情報が正しいかどうか以上に、受講者をアクションに促すメッセージかどうかの方が重要だからです。

複雑なメッセージは、正しくともアクションにつながらないものですからね。例えば、ゴルフのスイングの改善で、「もう少し脇を締めて、体重を右脚に乗せて、グリップの位置をこうして、3センチぐらい前に出して・・・」と、正しい情報を伝えても、そのとおりにスイングすることは至難の業です。

それよりも「ここにボールが入ってると思って、それをなぞって打ってみてください」と単純化して伝えたほうが動きやすいですから。野村さんのフィードバックは、アクションの改善をしやすくする単純化がなされていました。

― その他はいかがですか?

研修のなかでの「フィードバック」、「ファシリテーション」、「講師本人のプレゼンテーション」が素晴らしいと思いました。それぞれで、印象に残ったことを述べます。

フィードバック

受講者の向上意欲を高めるように、フィードバックのコメントをうまく組み立てられていました。おそらく、意図的にされていたのだと思いますが。良い点を伝えてから、初めて改善点に触れるとか、あとは言い回しとかも含めてです。

ファシリテーション

スケジュールどおりにカリキュラムを進めていくための、場の仕切り方がお上手でした。
たとえば、受講生がプレゼンをしている最中に「はい、おしまい」と区切って、説明に入ることがあるのですが、野村さんはこのタイミングがすごくよかったです。 おそらく、インタラクティブなプレゼンなどもお得意なのだろうなと。

講師本人のプレゼンテーション

最初の印象として「この人はフィラーがないな。プレゼンが上手な方だ」と思いました。
フィラーというのは、「あのー」や「えー」などの、つい使ってしまうノイズのことです。私はプレゼンターの技量を測るとき、まずフィラーが多いか少ないかを見るようにしています。講師の野村さんには、ほとんどありませんでした。

― 澤様、ありがとございました。

マーキュリッチを選んだ「3つの基準」

― それでは再度、齋藤様にお話しをうかがいます。今回の研修は3社のコンペだったと伺っています。
どういう基準でマーキュリッチを選ばれたのでしょうか?

次のような3つの基準で判断をしました。

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1) 要求に見合う講師2名のバックグラウンド

今回の研修は、受講者がエグゼキュティブ(役員)とエバンジェリストに分かれていたのですが、それぞれの対象層にマッチしたバックグラウンドを持つ講師に、指導を担当してもらえることが大きかったです。講師が2名いて、エグゼキュティブ向けを西野さんが担当し、エバンジェリスト向けを野村さんに担当してもらうという、その2名体制が魅力でした。

西野さんは過去に当社のエグゼキュティブのプレゼン指導をしていただいていましたから、エグゼキュティブの立ち居振る舞いの何たるかなども含めて、安心してお任せできるなと。

野村さんが元々、システムエンジニアをされていたことも安心材料でした。

当社はITの会社ですから、講師の方が、業界についてとか、エンジニアの特性など、ITの何たるかについてご理解いただいていないと、指導は難しいと思うのです。また、IT業界の指導実績の数とか、講師経験の長さなどからも、お任せできると判断しました。

2) 対面で会っての感触

今回、各社様にフェイストゥフェイスで何度もお越しいただいて、話をさせていただいたのですが、そのなかで、講師の話し方や仕草、どのような提案を持って来られるのかを、意識してチェックさせてもらいました。

提案の中身はもちろん重要ですが、その提案を魅力的に語るプレゼン方法など、総合的に判断させていただきました。マーキュリッチさんは、その総合点が高かったということです。

3)長期を見据えた提案内容

マーキュリッチさんからの提案内容は「長期的・組織的にプレゼン能力を高める仕組みが、組織の中に必要。そのために、社内のプレゼン上位者に、指導者としての指導能力を高めてもらいましょう。それを実現するために、今回の研修で各クラスにオブザーバーについてもらい、講師の指導方法を見てもらうと共に、オブザーバーの視点を受講者に共有しましょう」というものでした。

単なる研修ではなく、このような先を見据えた提案をしてくれたのは、マーキュリッチさんだけでした。

このような基準を持って、総合的に判断しました。

社内の既存研修で済ませなかった理由

― 御社のなかでは数多くの教育プログラムがすでにあるかと思います。
そのなかのプレゼン研修で済ませなかったのはなぜですか?

社内の研修は、何度も密に「プレゼンしては、フィードバック。またプレゼンしては、フィードバック」を繰り返すものではなかったからです。

今回の研修は、将来のトップタレントに向けた選抜制の講座でしたから、大人数に浅くトレーニングするのではなく、少数精鋭に深く実施する必要がありました。

少数精鋭に絞った分、だけの講座内容・見合うだけの受講者人選のもとに、進めていきました。

社内での事前の環境づくりの注意ポイント

― 受講者の人選以外で心掛けたことはありますか?

事前に、受講者の期待値を高めておくことです。

というのは、講師からの指導が受講者に受け止められるためには、講師に対しての期待値や尊敬の念があるかないかで大きく変わるからです。

ですので「期待値は私があおりますので、尊敬の念のところはマーキュリッチさんでお願いします」という二人三脚で準備させていただきました。期待値のところは、非常に高く上げすぎたかなと思うくらい、事前に上げておきました。

企画サイドから見た、研修の評価・感想

― 期待値を最大まで高めて、実際の研修はいかがでしたか?

とてもよかったです。

上げきったハードルをクリアできるくらい、講師お二人の人間力がありました。

― 人間力といいますと?

わかりやすいところで言うと、明るさです。

講師の野村さんも西野さんも、とても明るくて親近感があります。明るいから、質問しやすく、とっつきやすい。それと同時に、話の内容に説得力があり、プロフェッショナルです。プロフェッショナルで、かつ親近感があると感じられれば、尊敬の念にもつながっていきますよね。

今回の受講者のプレゼンの実力は、一定のレベルを超えていますし、これまでプレゼンに真剣に取り組んできたというプライドもあります。だから、変な講師を当ててしまうと、彼らもプライドがあるので、心のコップが上を向かない恐れも考えられます。西野さんや野村さんは、親しみやすさとプロフェッショナルさで、彼らの心のコップを上に向けてくれました。

― 何か印象に残ったシーンはありますか?

私の印象に残っているのは、野村さんの仕草なのですが、とてもエレガントだったことです。

研修している部屋の後ろから、野村さんが前に歩いているときの立ち姿・立ち居振る舞いを見て感心した記憶があります。おそらく、受講者であるスピーカー達も、その時点で「あ、いつもの研修とはちょっと違うな」と感じたと思います。

また、その後に野村さんが1人目のプレゼンに対してフィードバックをするのですが、受講者がとても深く頷いているのも印象的でした。研修にしっかり集中できていることがうかがえました。

我々も、教育費を投資している以上、見返りを出してもらわなければ困ります。その点、マーキュリッチさんの研修では、結果そういう心配をする必要がありませんでした。

― 齊藤様、最後に、マーキュリッチへの今後の期待をお聞かせください。

今回、マーキュリッチさんに依頼したプレゼン研修には、とても満足しています。私だけでなく、受講者自身が、プレゼンスキルの向上を感じているからです。

私がマーキュリッチさんに期待したいのは、こうしたタレント力の向上や、キチンと情報を伝える力がいかに重要かということを、広く伝えていってほしいということです。大それたことを言うと、社会に一石投じて欲しいなと。

企業が売り上げを高めていくには、人材のパワー向上が不可欠だと思います。その人材への投資を削ぎ落としておいて、売上アップを語るなど、順番がおかしいわけです。その重要性を、世間に発信していってほしいと思います。

― 齊藤様、延原様、反町様、澤様、本日は、お忙しい中、貴重なお話をしていただき、ありがとうございました。

※ 取材日時 2012年6月