西野浩輝 トーストマスターズ英語スピーチ「Throw away」

  ■そんなもの捨てちまえ 「西野さん、君はクビだ」「え?なんで?」   みなさん、こんにちは。西野です。あなたは自分の会社からクビ宣告を受けたことがありますか?私はあります。それが、忘れもしない19・・・

 

■そんなもの捨てちまえ

「西野さん、君はクビだ」
「え?なんで?」

 

みなさん、こんにちは。西野です。
あなたは自分の会社からクビ宣告を受けたことがありますか?
私はあります。それが、忘れもしない1998年5月13日。

「あなたはクビだ」
ただこの一言が、人をどのような気持ちにさせるか、わかりますか。
私はたった一言でボロボロにされた気持ちでした。自分の存在そのものを否定されたような。

しかもこのとき我が家では赤ん坊が生まれ、妻が会社をやめた直後でした。
「どうやって生活していけばいいんだ?」
「君はクビだ」の一言で、私は人生の絶望の淵に追いやられたのです。

 

その直後、上司に拝み倒しました。
「お願いします!お願いします!クビなんて言わないでください!」
「ムダだ。もう決定事項だ」
「そんなこと言わないで、お願いします!」
恥も外聞もなく、なりふりかまわず拝み倒した私に、上司は条件を言い渡しました。

「1000万円だ。これから2か月でそれだけ売り上げたならば、クビは取り下げる。
しかし、1円でも下回ったならばそれまでだ」

この数字、正直クリアできるような金額ではありませんでした。
1000万という数字は、当時その会社のどの営業マンも出せていない数字だったのですから。
それを、クビ宣告を受けるような負け犬が達成できると思いますか?
ありえません。
でも私には「わかりました。その条件でやります」という返事以外の選択肢はありませんでした。

 

少しだけ、当時の私の仕事について話させてください。
私は企業研修のプログラムを法人顧客に向けて売る営業マンでした。
そして、私がいた会社のプログラムは一言でいうと「クズ」だったのです。

時代遅れの内容なのに、そのくせ高い。講師だって大したことない。
あらゆる観点で、クズでした。
これが私が売れなかった理由であり、クビ通告を生み出した原因だったのです。

 

死刑宣告にも似たミーティングが終わるとすぐに私は事務所から外に出ました。
同僚たちの憐みの視線に耐えられなかったからです。

一歩事務所から出ると、外は一面春景色でした。
あたたかい日差しに、緑の木々。通りを歩く人たちの楽しげな声が聞こえてくる。
そんな世界の中で、私は感じていました。「惨めだ」

 

一日中通りを歩きながら、頭はこんな言葉に支配されていました。
「なんで俺だけが…?」
答えが見つかることはありませんでした。
夜、オフィスに戻ると、上司の姿だけがありました。
私は思いました。
「この胸くそ悪くなるような顔は今は見たくなかった」

しかしながら、彼にこれを聞かずにはいられませんでした。
「私のなにがいけなかったんですか?」
「西野さん、あなたが前職でトップセールスだったことは重々知っている。
でもね、それはあくまで前職の話だ。うちは状況が全く違うんだよ。
過去をひきずって、目が曇っているんじゃないか?」

 

その言葉で気付かされました。
自分は過去の栄光にとらわれていると。
クズは会社のプログラムではなく、自分だったのだと。

そして決意しました。もう一度、イチからやり直す。ここから始めようと。
翌朝から、私はやれる限りの全てをやりました。
コールドコール、飛び込み訪問から、海外から新プログラムをひっぱってくることまで。
とにかく、売るためにできることの全てをやりました。

 

そのプロセスで、驚きのことが起こりました。
私の態度が変わったのを感じた同僚たちが、私を様々なかたちでサポートしてくれたのです。
例の私にクビ宣告をした張本人までも!

それから2か月後、どうなったと思いますか?
見事、目標達成したのです。

 

みなさん、この話をどうお聞きになりますか?
クビ宣告の前、私は前職で自分が成し遂げてきたものにプライドを持っていました。

プライドそのものは決して悪いものではありません。
しかし私の場合、そのプライドは薄っぺらくて、やすっちい、ニセモノでした。
この手のニセモノのプライドは、時として人を傲慢にします。このときの私のように。

そしてそんな傲慢さが、前に進もうとする足を阻む。
でも、宣告をきっかけに私はクズみたいなプライドを捨てることができ、前に進む力を取り戻しました。

 

あの、胸くその悪い上司が教えてくれたのです。
もしあなたがこのときの私のように、前に進む足をからめとられているのだとしたら、こう伝えたい。

 

「そんなプライド、捨てちまえよ!」

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