ロールプレイを効果の高い取り組みにするには?

研修や現場のOJTで用いられる「ロールプレイ」は果たして有効な手段なのでしょうか?効果をもたらすには、発想の転換が必要です。

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from 西野浩輝

ロールプレイはどれだけの効果があるのか?

先日、ある企業で研修の企画を担当されている方から、こんなことを言われました。

「研修のプログラムの中に、ロールプレイのセッションを取り入れることにどれだけの効果があるのか、ちょっと疑問に思っているんですよね」と。

これには結構考えさせられました。

私が普段、ロールプレイを重視した研修を開いているからだけではありません。

私も以前、この方とまったく同じ疑問を抱いていた時期があったことを思い出したからです。

私が大学を卒業して最初に就職した会社では、営業チームの中でトレーニングの一環としてロールプレイが盛んに行われていました。私も何度もロールプレイで営業マン役や顧客役を務めましたが、そのトレーニングが現実の営業場面で役立っているとは、どうしても実感できなかったのです。

ロールプレイは意味がないという前に・・・

「ロールプレイの商談と現実の商談とでは、リアリティや緊張感が全然違う。ロールプレイだと、顧客役の人の演技が『こんな態度をとる客なんていないよ』といった現実離れしたものになりがちだし、周りで評価をしてくれる人たちのコメントも大雑把すぎて参考にならない。ロールプレイをやるぐらいだったら、少しでも現場で経験を積んだ方がいい」というのが、当時の私の正直な気持ちでした。

みなさんの会社でも、営業スキルやプレゼンスキルを高めるためのトレーニングの一環として、ロールプレイを取り入れているところは多いと思います。

でもあまり効果が感じられず、「ロールプレイは、本当に意味のあるものなのだろうか」と疑問を感じている方も、少なからずいらっしゃるかもしれません。
果たしてロールプレイがもたらす効果は、本当にそれほど低いものなのでしょうか。

結論から言えば、今の私は「No」だと考えています。

むしろ考え方とやり方さえ適切であれば、ロールプレイほどビジネスマンのコミュニケーション・スキルを伸ばすのに効果的な方法はないとすら思っています。

私たちマーキュリッチが、研修メニューの中でもロールプレイを柱に据えているのはそのためです。
では、ロールプレイを行うときの「適切な考え方」とは、どんな考え方なのでしょうか。

ロールプレイの主役は「営業マン」?

ポイントは「ロールプレイの主役を、誰に設定するか」というところにあります。

「ロールプレイをするときの主役は誰ですか。
商談のロールプレイでいえば、主役は営業マン役の人ですか。
顧客役の人ですか。それとも周りで二人のやりとりを見て評価をするオブザーバーですか?」

こんなふうに聞かれれば、多くの人は「主役は営業マン役に決まっているじゃないか」と答えると思います。

それはそうですよね。
ロールプレイの最中は、みんなの視点が営業マン役の人に集中します。

また営業マン役に対しては、的確なヒアリングや商品説明ができているかといったことが、オブザーバーから逐次チェックされます。
ロールプレイが終わった後には、オブザーバーによるフィードバックも待っています。

だからロールプレイの主役は、どう考えても営業マン役と思ってしまうのも無理はありません。

しかし、実は違うんですね。

ロールプレイでは、主役を営業マン役(プレゼンのロールプレイであれば、プレゼンテーター役)ではなくて、オブザーバーに設定することによって、これがうまく効果を発揮するようになるんです。

マーキュリッチの研修でも、「主役は営業マン役でも顧客役でもありません。周りで見ているあなた方です!!」と口を酸っぱくして強調しています。

オブザーブを主役にすることでの効果

オブザーバーにフィードバックを求めるときも、「全体的によかったです」といった雑ぱくなコメントは許しません。
どのようなスキルが使えていて、どんなスキルは使えていなかったかについての具体的なフィードバックを要求します。

するとオブザーバーは、営業マン役と顧客役のやりとりを真剣に、しかも細部まで見るようになります。
仮に、あるセミナーで20人の参加者が受講していたとすると、20回分の真剣勝負になるわけです。

つまり二人のやりとりを見ながら、
「こういった導入事例の紹介の仕方はわかりやすくて効果的だな」とか、
「どうも会話が噛み合っていないのは、営業マンが適切なうなずきや相槌が打てていないからだな」
といったような具体的な気づきのチャンスが、20回分もあるわけです。

さらにオブザーバーが、気づいたことを具体的に指摘してあげれば、熱演をした営業マン役にとっても、学びの多いロールプレイになります。

ところがロールプレイの主役を営業マン役に据えてしまうと、真剣勝負はたった1回だけになってしまいます。
どうしてもオブザーバーは傍観者意識で二人のやりとりを見るようになりますから、気づきが少なく、ロールプレイ後のフィードバックも雑ぱくなものに……。

そのためオブザーバーにとっても、営業マン役にとっても、学びの少ないロールプレイになってしまうのです。

このように多くのロールプレイがうまく効果を発揮できていないのは、「主役を営業マン役に設定していること」に原因があったわけですね。

主役を営業マン役ではなくオブザーバーに据えることで、ロールプレイは営業マンのコミュニケーション・スキルを伸ばすための最強の武器となります。

当社のの研修で、2日間程度で見違えるように商談スキルやプレゼンスキルが磨かれる人がいるのは、この仕組みがあるからです。
オブザーバーを主役にしたロールプレイなくして、そうした大変貌は考えられません。
天動説をくつがえして地動説を唱えたコペルニクスのように、「営業マン役主役からオブザーバー主役のロールプレイ」へと、コペルニクス的発想の転換がカギとなるのです。

 

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